school days

□颯太の話1
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「そーた、今日はどうすんの?」

鞄を肩に引っ提げた祐介が、こちらにやって来てそう尋ねた。

「んー、今日も図書室寄ってく。祐介と逸は?」

「俺はバンド、すぐるはバイト」

金髪で声が大きい祐介の隣で、黒髪で無口な逸がこくりと頷いた。
髪の長さも祐介は短髪、逸は長い前髪で右目が隠れるくらいだ。つくづく対照的な二人だ、と思う。
共通点は、二人共ピアスを開けてる事くらいだ。

「なぁなぁ、今度の土曜、そーたんち行っていい?」

「うん、いいよ。土曜なら兄ちゃんもいるし」

「よし!来週からテストだろ?勉強教えてもらおーと思ってさ。すぐるも春兄に会いたいだろうしィ?」

祐介がニヤニヤしながら逸を見ると、逸はつんとそっぽを向いて「…別に、毎週会ってる」と言った。

「やっべ!練習チコクする!そーゆうことでっ、じゃな!」

何気なく教室の壁掛け時計に目をやった祐介は悲鳴を上げて、慌ただしく教室を出て行った。

「…俺も、バイトだから。颯太、また明日」

「うん、逸も頑張れ」

こくんと頷き教室を出て行く華奢な背中を見送ってから、俺も鞄に教科書を詰めて図書室へ向かった。

俺が通う海青高校は、あまり偏差値の高い学校ではない。身も蓋も無い言い方をすれば、頭の悪い不良が集まる高校だ。

早く家を出たかった俺は、高校進学と同時に大学生で一人暮らしの兄のところに転がり込んだ。そこら辺は思春期の葛藤ってやつだ。察して欲しい。

中三の冬、一流の進学校を受験した俺は、受験当日に熱を出してことごとく志望校落ちた。だけど祐介や逸みたいにいい友達もできて、今は特に不満はない。

この学校でなにより嬉しいのは、図書室を占領できるって事だ。

この学校で本を好んで読んだり、放課後に居残ってまで勉強する生徒はほとんどいない。

しかし図書室には、いつも先客が一名いるのだ。

カラカラと横にスライドする扉を開けると、窓際の机に金髪の男が突っ伏していた。
俺が図書室に来るとき、彼はいつもその体勢でいる。

少し長めでサラサラした金髪。
突っ伏してはいるものの、立ち上がれば俺より10cmは身長も高いだろう。

その男を横目で見ながら、俺は適当な机に教科書を広げて勉強を開始する。
兄ちゃんは超難関国立T大の4年生だ。頭が良くて何でもできる兄に憧れる弟としては、T大ほどじゃなくてもいい大学に進学したい。

その日は図書室が閉まる6時の10分前にそこを出た。結局俺が図書室にいる間中、奴は机に突っ伏したままだった。
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