school days
□颯太の話1
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週末がやって来た。
男同士だから身嗜みなんて気にしなくていいし、部屋着にしているTシャツとハーフパンツのままで二人を迎える事にした。
両方とも兄ちゃんのお下がりなのだが、兄ちゃんは無駄に背が高くて手足が長いので俺が着るとぶかぶかだった。
「兄ちゃん、二人とも11時に来るってー」
「ああ、わかった」
長い脚を組んでコーヒー片手に新聞を読む兄ちゃんは、弟から見ても格好いい。
お菓子を出しておこう、と棚をごそごそ漁っていたら、ぴんぽーんと玄関から音がした。
「上がってぇー」
「うーす、お邪魔しまっす!」
「…お邪魔します」
「いらっしゃい、よく来たね」
にっこり笑う兄ちゃんに、祐介は勢いよく頭を下げる。兄ちゃんが逸のほっぺたにちゅっとキスしたら、逸は顔を赤くして「ちょっと、」と兄ちゃんの顔を押し返した。
そう、兄ちゃんと逸は、いわゆる恋人同士ってやつだ。
祐介は高校からの友達だけど、逸は中学からの友達だ。
逸は中学の頃、ひどく顔色が悪く、折れそうに痩せ細くなっていた時期があった。付き合い始めたのを知らされたのは、それが徐々によくなってきた頃だ。
何があったのかは聞かなかったけど、付き合っているという事を告げた時の逸の顔色は真っ青で、ひたすら俺に謝ってきたのを覚えている。
正直俺は、頭をカナヅチで思いっきり叩かれたんじゃないかってくらいの衝撃を受けた。
でも、膝の上できつく握り合わせカタカタ震える逸の両手を、兄ちゃんが労るようにそっと包み込んだ時、俺は二人を全力で応援しようって決めたんだ。
「おめでとう」って言った時、逸は一瞬目を見開いてから俯いて泣き出した。
それが中三の春で、今は高二の夏だから…三年目か。
相変わらず逸は女の子みたいに華奢で色も白い。食事も俺や祐介からすると考えられないくらい少食だけど、毎週末うちに泊まりに来た時は兄ちゃんが作った料理を一生懸命食べている。
まぁ…逸が兄ちゃんの部屋に泊まる日は、俺はヘッドフォンで音楽を聞きながら寝なきゃいけないんだけど。
二人が幸せならいいと思う。
ちなみに祐介は二人の関係を知った時、「へぇー、リア充なんだな」と何とも的外れな反応だった。
どうやら祐介にとって性別はあまり重要ではないらしい。
「よし、じゃあ勉強道具出しな。見てやるから」
兄ちゃんのその言葉で、皆でいそいそとテーブルに教科書やノートを広げた。