桜
□幕間 疑心
2ページ/4ページ
彼女と過ごす間
私は妙な違和感にさいなまれていた
普通の人なら、必ず聞き返してきそうなところで、聞き返してこない
例えば、私が母の着物を貸すと言ったとき
普通なら、母の所在を尋ねるのではないか
言蔵さんとの会話を聞いていたことも知っている
でも、そのことに関して、彼女は何も言わなかった
一つ一つの質問をしたあと、必ず何かを考えている
私に年齢を尋ねたとき、年齢を知って、なぜか驚いたようすだった
それは25歳だったことを驚いているというより、恐怖に脅えているような雰囲気だった
そして、私が声をかけるまで、私の存在すらも忘れているようだった
普通の人間なら、すぐにでも家に帰りたいはず
とりあえずお金を借りて、帰ってから返すのではないか
わざわざ、私の元に留まらなければならない理由があるのだろうか
言蔵さんの名前を聞いて、彼女のことを知っているようだった
それは、鴉取君、狐邑君、鬼崎君に関しても、同じように感じた
そして、私のこともよく知っているようだった
私たちが守護者であることを知っていて、何かを探っているのではないか
封印に対して、何らかの攻撃をしかけようとしているのではないか
そんな考えが、頭から離れなかった
.