びーえる

□兎がくれたびっくり箱
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「ユウ」

声がしたかと思ったら、こいつは唐突に、俺の部屋にノックもなしで入ってきやがった。
殴るぞ、コラ。
赤毛をヒョコヒョコと揺らし、近づいてくる姿はまるでうさぎ。

「なんだ?」

少しだけ面倒くさそうに(実際面倒なんだが)返事をしてみると、うさぎはとことこ俺の目の前にやってきて、小さい包みを突き出してきた。
何がなんだかわからずそれを見つめていると、うさぎはにっと笑う。
そして口を開いた。

「Happy Birthday、ユウ!」

大きな声で言われたその言葉に、ああ、そういえば今日だったか、なんて考えて微笑する。
うさぎはそんな俺を見て満足そうに笑うと、開けてみ、と促した。
言われた通りに小包を開けてみると、ピエロの顔のようなものが勢いよく飛び出してきた。
所謂、びっくり箱というやつだ。
内心、本当に驚いたのは言わないでおく。
ポーカーフェイスで良かったと心の底から思ったが、バカに笑われた。

「あはははは!ユウ、びっくりしたさ!眉毛ぴくって、ぴくってなった!!」

こいつの笑い声がたまに癇に障るのは気のせいだろうか。
とりあえず、一発殴っておいた。

「いって」
「刻むぞ」
「悪かった。ちょっとした出来心だって」

あはは、と渇いた笑い。
心配しなくとも、本気で刻んでやろうなんて思ってない。
モヤシは別だがな。

「あ、そうそう、ユウ。そのびっくり箱の中、見てみ」
「妙な仕掛けは、ないだろうな‥‥‥?」
「ないない。いいから、ほら」

痺れを切らしたうさぎが、俺の持つ箱をぐいっと目の前に近づける。
仕方がないから中を見てみると、小さな影が目に入った。
気になって中身を取り出すと、それが人形だということがわかった。




「これは?」
「一応俺なんだけどさ、どーだろ。見えっかな?」
「‥‥こっちの方が、可愛いげはあるな」
「どーいう意味さ、ユウ」
「そのままの意味だ」

ガラにもないことを、と思いながらも、嬉しいことに変わりはないから、素直に喜んどく。
初めての、誕生日に貰ったプレゼントだ。嬉しくないわけがない。

「で、どうして人形なんだ?」
「ん?どうしてって‥‥‥」

俺の問いかけに、うさぎは照れ臭そうに頭を掻いた後に言った。

「任務で一緒にいられない時に、こいつが俺の代わりにユウと一緒にいたら、ユウも寂しくねぇかなって思ったからさ。丁度、誕生日も近かったし」
「そう、か‥‥‥」

予想外の答えに、俺はいっぱいいっぱいになった。
こんなことは初めてだから、どうすればいいかわからない。
というか、はっきり言って、こっちの方が俺的には心臓に悪い。
とんだびっくり箱だ。いたずらうさぎめ。

「いらねぇか、こんなの」
「いや‥‥貰っておく」
「ほんとか!?」
「ああ」

感激のあまり、「ユウ、サンキュー!」と言いながら抱きついてくるうさぎを、俺はガラにもなく撫でてやった。

その後の任務中に、人形のおかげで寂しさが紛れたのは言うまでもない。





END



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