聖女か魔女か
□5.扉とはノックしてから入るもの
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「……くんは、おおきくなったら……とけっこんしてくれる?」
シロツメ草が咲き誇る公園に小さい女の子と男の子が二人
どこかで見たような顔だった
でも誰かは思い出せない
名前は砂嵐が鳴るように響きうまく聞こえない
顔も塗り潰されたようにモザイクがかかっている
「うん!ぼく……ちゃんのこと、すきだからけっこんする!!」
小さな男の子は笑顔で小さい女の子に言った
小さい女の子も笑顔で
「やったぁ!!うれしいな!!」
と答えた
小さな男の子は小さな女の子の手を取り、先程から作っていたのであろう
シロツメ草で作られた小さな結婚指輪を女の子の指に嵌めた
「やくそくだよ!!」
「うん!やくそく!!」
そして幸せな光景は一変し
女の子は大きくなった
大きくなった女の子は屋上のビルの
柵を乗り越え
綺麗な笑顔で
落ちていった
大きくなった男の子は女の子に向けて手を伸ばしていた
落ちる
落ちる
落ちる
落ちる
女の子は落ちていく
その下に大きな化物が
口を開けて待っているのにも関わらず