短文・他

□透明だとしてもそれはそこにある
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『透明だとしてもそれはそこにある』


何も注がれないし、
何もない。
空っぽのグラス。

隣りにいる筈だった水で満たされた遠い双子を羨んでも何も起こらないのだからせめて光の透過するからだをちりばめて存在を主張しようとグラスは考える、でなければ自分を満たす何かの存在をひたすらに待っているしかないのだからと。

それらが近い将来か気の遠くなるおびただしい時間の群れの先になるのかグラスは知っていないし、他の何ものも知らない。

付け加えると、ただそこにあるだけで満足できるグラスならそれは高級な棚に飾られるべき筈なので以上の事は考えようともしないし考えたとしても些少の時間を待つだけにすぎない。



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