詩集

□《詩集A》
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『雨傘』


叩く雨に傘開く

木々に
地面に
人々に
雨は落ち
目を閉じれば雨音のみが響く
静寂の狭界

心音と雨音が混じり合い
ゆるり不安を煽りだす

孤独の湖に呑まれまいと
あがいても足は着かず
体に纏わり付く
不安という名の枷
引き千切ろうにも手には掴めず

混乱の中
湖上を目指す
見上げた先
湖面に映る私と相対する
写し身の私は
私より私らしく
愚かしくなく

望みの我が身を抱きしめるが
重なり合った先に見えたのは
ただ雨が叩く傘だけ


湖面の私は傘閉じた私

晴れた空に目を細める私


雨雲の消えた空を見に行こう
私らしくある為に
雲間に覗く光を全身に浴びる為に

たとえ傘閉じて雨に打たれようとも




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