AIR

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次に会ったら別れを切り出そう。




そう思っていてもおおちゃんを目の前にすると決意が揺らぐ。




私の中からおおちゃんを取っ払った生活を想像してみるけど




毎日嵐を見ない日はなくて




きっと忘れることなんてできない。




ついさっき電話越しに聞いたおおちゃんの声。




耳に残る愛しい声。




じわりと溢れてくる熱いものは




いったいこの体のどこから湧き出てくるのだろうか。




どれだけ涙を流せば渇れるんだろうか。




キュッと胸を締め付ける切なさは心が痛いと叫んでいるようだ。




「ゆき…どうかした?」




「ん?」




「眠いの?」




「ふふ。それはおおちゃんでしょ」




「俺はいつも眠いから」




「じゃ早く寝なきゃ」




「うん」




「じゃあね」




「うん」




「おやすみ」




「…ねぇゆき?やっぱりなんかあった?もしかして誰かに何か言われた?」




「…なんにもないってば」




「そっか」




「明日もお仕事頑張ってね」




「うん。おやすみ」




「おやすみ」




離れてしまったら…




おおちゃんがいつベッドに入るのかも、いつ釣りをしに行くのかも、どんなお酒を飲んだのかも




なにもわからなくなる。




おおちゃんの日常が私の中から消えてしまう。




そんなの…




そんなの嫌だよ…。




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