短編


□甘いKiss
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酔った勢いでしたキス。


遊び感覚で始めたキス。


初めはチュッチュッって唇を合わせる程度だったけど


唇を甘噛みされ


貴方のトロンとした優しい目に捕えられた私は


もっとキス求めた。


「んふ」


どちらのものかわからない時々漏れる声にならない息が


妙に響き欲情を煽る。


唾液の音が心地よくて


口を開き相手の唇を求める。


「キス…


すごく上手…」


「そ…う…?」


キスという行為以外では絶対に交わることのない舌が


吸い付くように絡み合う。


「あ…んふ…」


テレビで見るおっとりした彼からは全く想像もできない


甘い…大人のキス。


「そろそろ止めないとオレ本気になっちゃうよ」


そう言って彼は私から離れた。


私といえば、いまさら体の中で燃え始めた炎を消すことは困難で


離れてしまった彼とその唇を名残惜しげに見つめていた。


「そんな目で見ないでよ」


優しい瞳が私を諭すようにそう言う。


「…」


「あははは。これ以上続けると俺が我慢できなくなるから」


我慢しなくていいのに。


「戻る?みんな心配してるかも」


私は小さく頷いた。


親睦会という名の合コンにモデルの親友に誘われて参加した。


テレビで見たことがある人も沢山いて、私は場違いの人間に思えた。


少し酔いがまわり私は席を立った。


その時声をかけてきたのが彼、嵐のリーダーで


立ち話をしているうちに何故かキスをすることになったのだ。


酔った勢いでしたキスなのに…


遊び感覚で始めたキスなのに…


ほんの数分で私は彼の虜になってしまった。


「抜け出す?」


火がくすぶる私を見透かすように彼はフニャっと笑い言った。


このまま遊ばれてもいい。


一夜限りでもいい。


「いいの?」


「俺はかまわないけど」


彼の優しい顔を見ていると、もうどうなってもいい、そう思えた。


二人で抜け出したのはいいけど外に出たとたんシラフになってしまった。


彼は彼で、さっきまでの勢いもなく抜け出した理由もわからなくなる程だった。


「どこに行くの?」


「どこ行こうか」


「…行くのかと思った」


「どこに?」


「ホテ…ル…とか…」


「あぁ」


ついさっき、溶けてしまうような甘いキスをしていたのは本当にこの人なんだろうかと首をかしげたくなるくらい


いつもテレビで見る大野くんに戻っていた。


「別人」


「え?」


「キス」


「あぁ…なんか、アルコール入るとしたくなるんだよね」


「もしかしてキス魔?」


「いや、違う。…なんか無性にしたくなって」


「へぇ。アイドルってそうやって口説くんだ」


「いやっ、ホントに…キミのこと最初に見たときから興味あって…その…


席立ったから…追いかけたんだ…」


意外な告白に面食らった。


アイドルが私を?


にわかに信じがたいけど、ボソボソと呟くような話し方は嘘をついているようには見えなかった。


「キミこそ…誰とでもするの?…キス…とか」


「しないよ!」


彼に軽い女だと思われたのが嫌で全力で否定した。


「彼氏は?」


「いない。大野くんは?」


「いないよ。

俺たち…付き合わない?」


「は?」


「ダメ?」


照れるように笑う顔につられて私の頬も自然と持ち上がった。


「今日初めて会ったのに」


「うん」


「うんって」


「もっと知りたい」


夢みたいな出来事だけど


こんな始まりもアリなのかな。


キスから始まる恋。


出会ったその日から始まる恋。


甘いキスは二人の相性の良さを証明してくれた。


「キス続きは?」


「ここでする?」


「こんな人前で?」


「オレは構わないよ」


end.

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