短編


□翔くんと俺
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翔くんと俺。


翔くんは…


俺たちが幼く、華奢で愛らしかったあの頃から


俺の憧れの人。


カッコいいんだ。


聞いてる音楽。


話に出てくる友達。


着ているTシャツでさえ関心の的だった。


「うざいんだよ、オマエ」


その言葉にも愛を感じた。


「ったく泣き虫だな…」


いつも俺に構ってくれて、引っ張ってくれて甘やかしてくれた。


転機は突然やって来た。


本物の芸能人になった。


俺にとっては念願のデビュー。


夢への第一歩。


隣に翔くんがいた。


ジュニア期も一緒にいたけど、同じグループだなんて


一生一緒にいられる。


それは何にも変えられない喜びだった。


15周年を迎え、話題にのぼることも度々あるけど


翔くんはジャニーズを辞めたかったんだ。


それでも一度乗ってしまった船から降りることはなくて


五人グループ。仲良くやっていた。


…つもりだった。


「俺達ちょっと距離を置かない?」


ある日言われたその言葉。


今ならわかる。五人の調和をとるため、翔くんが考えたことだと。


真っ直ぐでA型の俺はそれをそのままと受け止めた。


距離をおくってなんなんだ。


どうすればいいのか、俺にはさっぱりわからなかった。


翔くん意図も、その言葉の意味も消化できないまま


いつも苛々した、誰も触れることができない刺々しい松本潤が生まれた。


それからなんだ…翔くんと俺の間に隙間ができてしまったのは。


雑誌の取材で翔くんもこう答えている。


「楽屋に入りいつも通り挨拶したら、急にそっけなかった」と。


当時、嵐の中で翔くんと俺は人気を二分していて


その俺たちがこれでもかっていうくらい仲が良くて


俺にとってそれは普通のことだった。


翔くんは憧れの人で、大好きな人で。


だけど翔くんは違っていた。


いつもどんな時でも嵐のことを考えてくれていたんだ。


俺は嵐をアイドルナンバーワンにしたかった。


頑張ればそうなれると思っていた。


翔くんは、ナンバーワンになるためにはチームの結束がなによりも大切だって気づいていたんだ。


翔くんの言葉の意味を理解できなかった幼稚な俺は


翔くんとの大切な時間を失ってしまった。


俺たちの間に出来た深い深い溝は何年も埋まらなくて


お互い歩み寄ろうとするものの、磁石のS極とN極のように付かず離れずの距離は続いた。


でも、傷は深かったけど一番底でしっかりと繋がっていたんだ。


「松潤、俺は今も昔も変わらないよ」


10周年を迎えた頃、歩み寄ることをお互いが許せた。


それまでだって仕事の話はしていた。至って普通の、グループのメンバーとしての会話は。


だけど、昔のように甘えたり、スキンシップをしたり


そんなことはできなくて


それでも心は誰よりも翔くんを求めていた。


尊敬してるんだ。


誰よりも近くで翔くんを見てきた。


誰よりも翔くんの放つエネルギーや輝きを感じてきた。


そして、昔も今も変わらない…


櫻井翔の一番のファンは俺だ。


翔くんが俺を頼ってくれている。


嵐の両輪だと。


翔くん、俺のパワーの源は何だと思う?


翔くんだよ。


今も昔も。


翔くんに認めてもらいたい。


大好きだから。


家族でも、恋人でも、ライバルでもない。


櫻井翔は俺の一番なんだ。


翔くんと俺は


今も昔も…翔くんと俺なんだ。


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