戦の扉

□似たもの同士
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「では、私は失礼いたします」

食べ終わった皿を片付け、台所に持って行こうとしたが

「煌凛殿も一緒に休まぬか?」
「で、ですが私は家臣ですので・・・」
「気にする事なんかないでござるよ」

ニコッと笑顔を向けられれば、断る事ができない。

では・・・

そう言って幸村と共に縁側に座る。
のどかな庭を見ていると、今が戦国乱世だなんて思えなくなる。

「・・・のどかだな」
「はい」

チラッと幸村の方を見る。


女が苦手で、小さな事でもすぐに

“破廉恥でござるぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ”

と叫んで何処かへ行ってしまうような人物。
それでも戦場に赴けば

“虎の若虎”

と恐れられているのに・・・


今自分の真横にいる人物は本当にあの真田幸村なのかと疑いたくなる。

破廉恥と叫ぶ様子も無く、戦に熱を上げる様子も無い。
ただ庭を眺めている青年にしか見えない。

「こんな一面もあったんだ・・・」
「どうかされたか?」
「い、いいえ。何でもありません」

今にして思えば、幸村とこんな風に・・・
自分と年の近い異性と話したのは初めてなのではないかと思った。
実際煌凛の近くにいる年近いものなど、佐助を入れたとしても片手で足りるほどしかいない。

そう思うと、此方が恥ずかしくなってきた。





顔が赤くなっていくのが分かる。
そっと両頬に手を添えると、そこが熱を持っていた。

「大丈夫でござるか?」
「へ・・・?あ、はい!」

油断していた所為で、間抜けな返事をしてしまった。
それを申し訳ないと思い俯く。

だが幸村は、煌凛が気分を害したのではと思いアタフタしだす。

「えっと・・・その、本当に大丈夫でござるか?」
「はい。如何なさいましたか?」
「だ、大丈夫ならよいのだが・・・いや、でも・・・」

混乱しかかっている幸村の行動が可愛くて仕方ない。
百面相までして、見ていて飽きない。

「本当に大丈夫ですから、落ち着いてください」
「す、すまぬ・・・」

漸く大人しくなった。
クスッと笑って、幸村の頭を撫でる。
優しい表情で撫でてくれるのが嬉しくて。
でもいきなりされてビックリしてで、幸村は固まっている。
煌凛も何をしているか気付き手を止める。

そして、サァッと顔を青くして土下座して謝る。

「も、申し訳ございません!!」
「いや、謝らずともいいでござる」
「ですが、家臣の見でありながら、幸村様にご無礼を「某は、無礼だとは思っていないでござる」

顔を上げると、顔を真っ赤にしている幸村の姿がある。
何故今頃になって顔を赤くしているのだろうか。
疑問が煌凛の中で渦巻く。

「そ、某は・・・煌凛殿に頭を撫でてもらえて嬉しかった。お舘様とは違う、小さな手であったが・・・その、とても・・・」



あ、叫ぶかも・・・(汗)



「破廉恥でござるぅぅぅぅぅぅぅ!!」

そう言って何処かへ行ってしまった。
今回はちゃんと耳栓をしたので効力は半減した。
それでも半減だけだが・・・

「どうなさったんだろう、幸村様」

本気で不思議に思った煌凛だが、今行っても逆効果だと思い団子の皿を片付けた。





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