Horimiya


□無意識に
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授業を終えた石川が廊下を歩いていると、

教室でせっせと黒板に書かれた数式を消している田中を見つけてだべっていた。



忙しなく動く田中が時折自分の後頭部を撫でるので、

どうしたのか聞いてみたら言葉に反して元気そうな返事がした。





「頭いたーい」

「それにしては元気だな」

「宮村がケーキくれたので」

「あいつケーキ持って来てんの!?」

「ホールだった。生徒会室行ったら食える」

「まじで!行ってくる!」

「走れ石川!さっき安田とすれ違ったから、見つかったら全部食われるぞ!」

「それ早く言えよ!」




バタバタと足音が遠ざかっていった。



何か悲痛な叫び声がしたが、切り忘れた爪で黒板を引っ掻いてしまいよく聞こえなかった。

もう手遅れだったのかな、と思いながら静かな教室で田中は黙々と数式や文字を消していく。






文字を全部消して教壇の前ので日誌も書き終わり、自分の仕事がすべて終わって

そのまま席でだらけていると、緑が大量のプリントを手に教室に入ってきた。





「あれ、井浦はケーキ食いに行かなかったんか」

「食ったよー!でもその後に安田にプリントまとめろって言われてさぁ」

「あらあら、それは面倒だこと」

「だろー!!」

「あーもう井浦声うるさい。頭痛が痛いんだよこっちは」

「えっ田中体調悪いの!!保健室行かなくて大丈夫なの!?」

「おれおまえのそういうとこだめだとおもう」

「えっなんで!?」

「うっせ!もういいからプリントまとめんの終わらせろよ手伝うから」

「やだっ田中が優しい!」

「俺はいつでも優しいぞ」

「熱でもあるんじゃないの!?」

「だから大声出すなって!触んなうぜぇ!」

「あ、いつもの田中だー」

「だーから早くプリント配れって…」




ガタッと席を立った瞬間、田中は少しふらつき、眩暈を感じて振り払うように首を横に振った。


顔を上げると何やら怪訝な表情をする井浦。

どうやら怪しく思ったらしい。





「……田中」

「なに」

「やっぱお前デコ出せ!」

「うわっ何すんだよ!(ベチン)いてっ」

「ほるぁ!やっぱ熱出てんじゃん!!」

「え?出してるつもりは…」

「つもりで出すものじゃありません!!」

「あーもう自覚したら頭ぐらぐらしてきたあ」

「えっとりあえず保健室!歩ける?」

「寝させて」

「だから保健室で寝ないと!」

「やぁだもうムリぃ」

「えー!えー、どうしたらいいの!」

「あっ!柳!!」

「えっ!あかね!?」


「あれっこんにちは!どうしたんですか?みんな生徒会室にいましたよ」

「あかね!田中が熱で保健室でどうしよう!」

「落ち着け井浦」

「お前のことだよ!!」

「田中君熱あるんですか!?」

「ないよ」

「あ る ん だ よ !!」

「あるなら保健室行かなくちゃダメですよ?」


「うーん…柳が言うなら…」

「あかねの言う通りだよ!ほら、俺も着いてってあげるから行こ!」

「あ!僕先生に呼ばれてるんで、井浦君がんばってください!」

「え!?ちょっあかねーーー!!」

「ごめんなさい!」ダッ












柳は走り去った。








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