Horimiya
□ボタンを掛け違っていたの
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「ただいまー」
いつものように堀家のコタツに入りながらテレビを見ていると、
知らない男の声が帰ってきた。
堀さんは寝ている。
「誰かいねーの?……!」
「…こっ、コンニチハ…」
ひょこっとリビングに出された顔はもちろん知らない顔で、その人は俺を見て一瞬固まった。
堀家の親戚だろうか。
髪の色が堀母の茶色とも堀父の灰色とも言えない薄い茶色で、俺と同じかちょっと年上ぐらいの男子だ。
とりあえず失礼のないようにと挨拶をする。
「…ちす」
素っ気ないながらも返してくれた。悪い人ではなさそうだ。
するとその人は、コタツ机に突っ伏して眠る堀さんの肩を優しく揺すった。多分良い人だ。
「…京子」
「んん゛…?」
「起きて。帰ってきた」
「んー…あ!!悠介!おかえりー!!!」
「うおっ」
「!?」
起きるやいなや、堀さんはその人の顔を見ると抱きついた。
どういう関係なのかとか、何も知らない俺はただその光景を見て固まるしかなかった。
「ただいま」
「もー!いつ帰ってきたの!?連絡くらいしてよねー!!」
「さっき帰ってきたし連絡は朝に母さんにしたよ。それよりこの人は?」
「え?あー、えと、彼氏…です」
「あ、み、宮村伊澄です!」
「……」
立ってみると俺より背の高い彼は、まるで品定めするかのような視線を刺してきた。
居心地は悪いが負けるわけにはいかない。
「……」
「……」
無言の攻防が続き、堀さんは涙目だ。
「……堀 悠介。京子の兄です」
「!!」
「…言ってなかったっけ」
「「聞いてない!」」
「なんだよ彼氏って!一番重要なことだろ昨日京介がたこ焼き買ってきたなんてどうでもいいんだよ!」
「堀さん俺お母さんと京介さんと創太しか紹介されたことないよ!」
「申し訳ない」
「京子お前!兄の存在は無視か!?てか宮村君は京介のこと名前で呼んでんのか!」
「えっハイ!スイマセン!」
「あんなやつオヤジでいいんだよ」
「えっっっ」
そう言いながらモゾモゾとコタツに入ってくる悠介さん。
まさかの寝る体勢だ。
「あっ悠介ちゃんと手洗いうがいした?」
「…俺は寝るんだ…」
「こら!晩ご飯食べさせないよ…あ、悠介の分あるかな」
「えっ…俺昼食べてないのに…」
「食べたいなら手を洗いなさい」
「食欲より睡眠欲のが勝る」
「食料買いに行こうよ堀さん…」
ボタンを掛け違っていたの
(悠介さん悠介さん)
(京子―懐かれたー)
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堀が「お兄ちゃん」と読んでる様子が想像できなかったので主人公呼び捨てになってます。
多分20歳ぐらいで、堀家を出て1人暮らししてたんだと思います
…もしかしたらシリーズ化するかもしれない……