お題企画
□09.背中 神田ユウ
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神田の背中はとても綺麗だ
俺の傷だらけの汚い背中とは到底似つかないのに、戦った数は最近入団した俺の数倍だろう
彼の身体は、どんなに傷を負ってもすぐに治ってしまうのだ
こないだ一緒になった任務で見た、小さな音を立てて消えていく傷が忘れられない
任務地の大衆浴場で、足を滑らせた俺とその巻き添えになった神田は一緒に転んだのだ
俺は後頭部に盛大なたんこぶができて、神田は浴場のタイルで背中に小さな切り傷を作った
後頭部の激痛で涙目になりながら神田に謝罪しつつ怪我を確認すると、すでに閉じようとしているそれをはっきりと目撃し、本人にも確認した
神田はそういう体質なんだと適当なことを言っていた
その時は便利なんだなと答えた気がするが、レベル4が襲撃してきたときに、治っていく神田の傷を見たコムイさんがとても悲しそうな目をしたので
なんとなく良くない現象なんだと理解した
教団でも浴場で会った時に、度々神田の背中を平手で叩く
手形がつくことはなく、べちべちと鈍い音が響くだけだった
「おい」
「……」
「おい、やめろ」
「…神田は痛くないのか」
「痛えからやめろと言ってんだ」
「そっか」
「だから平手打ちをやめろってぶった斬るぞ」
「いやいや、お前脱衣所に六幻置きっ放しじゃね?」
「…テメエなんぞ素手で十分だ」
「遅めの反抗期なんだね」
「コロス」
「まあまあ、治るのはいい事だけど、痛い思いするのはよくないよ」
「痛い思いさせてんのは誰だよ」
「痛くない!痛くない!」
「痛えんだよ!なんなんだお前!!」
「それ気のせいだよ神田!」
痛いの痛いの飛んでけ〜
遺体?
カカカカカ、カンダサン!
カカカカじゃねえよしっかり喋れよ
09.背中