BOOK1
□キミのトナリ。
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一歩、家から外に踏み出すとやわらかく温かい日差しに包まれる。
大きく深呼吸。
春の空気はなぜか懐かしさを感じてしまう。
「でっけぇ口」
……隣から聞こえてきた声のせいで、せっかくの深呼吸が台なしだ。
「うるさい。深呼吸してただけ!!」
「これが深呼吸!? あくびの間違いだろ」
「あくびじゃないし」
「どう見てもあくびだし」
こいつ、口調を真似てきやがった。
「だからあくびじゃないって!! ……はぁ、もういい、先行ってるから」
自転車を手で押しながら彼の、彰(アキラ)の前を横切っていく。
彰は慌てたように「ごめん、ごめん」と謝り私の隣に来る。
ちゃっかり自分の鞄を私の自転車の籠に入れてるし……
男のくせに。