BOOK1
□壱留川さんと私
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「見ぃーたーなー」
真後ろから聞こえた、低く作った声。作らなくても元から低いのに。
気配がないのはいつものこと。
急に背中に立たれて驚かないのは私の性質なのだろうか。
私は壱留川さんいわく感情が疎いそうです。
私は振り向くと同時に背の高い金髪の彼にビンタをします。
ちょうど彼の頬に綺麗にヒットしパーンと響く音と、赤い手の跡を残しました。
「痛てぇ」
ボソッと呟かれた言葉。
だから私も呟き返します。
「すみません。驚きましたので…大丈夫ですか?」
ニッコリ笑います。
もちろん作り笑顔です。
「ぜってぇー嘘だ…」
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