一時の幸せ
ポーンと微かに聞こえる音。
ピアノのシの音。
図書室から毎日、昼休みに聞こえるピアノの音。
始めにシを4回鳴らすと、それを合図に曲を奏で始める。
流石に曲の題名まではわからないし、毎日聞こえる曲は違う。
上手いのか、そうでないのかもわからない。
ただ…
この音は私を幸せな気持ちにさせてくれるのだ。
「これ、お願いします」
渡された本。
図書委員の私はその本を受け取り、カードに日付やらを書き込んでいった。
耳をすませば微かに聞こえるピアノの音。
静かだけどみんな何かと集中していて、この音に気がついているのは私だけではないのか。
なんて、ちょっと得した気持ち。
「はい、どうぞ」
本を渡し、ニッコリと微笑む。
――うん、今日も幸せな一日になるでしょう。