宝箱

□閉じ込める
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KENYA side


光が、まさか自分と白石を比べてたなんて、びっくりした。

そら、俺と白石は親友で、ずっと一緒におったけど、それは当たり前の空気で。
恋愛感情とか、そういうのは湧かへんかった。

俺の心を鷲づかみにして、離れようとしても離してくれへんのは光。

目で追ってしもて目を反らせへんのも光。


――ちょっとは、嫉妬してくれたんかなぁって。


少し歯痒くて嬉しい気持ちになった。


何気にこっそり俺と光の関係を気にしてくれとった小春と白石に、そんな報告をこっそりしとった。


「やーん!光クン可愛ええやないの!もー惚れてまうわぁ!!」
「きゃー!コレはやばい、財前→謙也とかっ…!攻めが必死なBLに萌える…!」

「…おい、何でマコやん混じってんねん」
「ええやん、あいつも心配しとったんやって」
「絡みが久しぶり過ぎて報告したかどうかも忘れとったわ」

小春が連れて来たマコやんは鼻息も荒くして小春にBLを語っとる。俺は隣で顎に手をやって考えたような白石を横目で見た。

「白石どないしたん」
「いやぁ、財前もおもろいなぁと思ってなぁ、可愛ええやっちゃ」
「馬鹿にしてんの?」

じとっと眉をひそめたら気持ち悪いくらいな笑顔で、というかニンマリ笑ってマコやんを呼んだ。ヒソヒソ話をし出す二人に俺はぶすくれる。

「ちょお、何コソコソやっとんねん」
「謙也ぁあああ!」
「何?!マコやんホンマに何やねん!」
「いいと思います!」
「何が!」

小春に助けを求めようとしたら小春は誰かに電話しとって。
俺は白石の頭をパシッとしばいた。
俺のその手をがしっと掴んで相変わらずニンマリ笑っとる。

「…気持ち悪いねんお前ら!ホンマ喧嘩売ってんの…」

「光ぅ!もー遅いわよ!早く早く!」

「へ、え、え?!」
「白石やめぇや…っ…!」

ガタン、


…何がどうなったんか教えて欲しい。

俺は両腕つかまれたまま白石に押されたから机に腰打ち付けて、何故か小春は光を電話で呼び出して。呼び出された光は教室の扉んトコに棒立ち。

そして一番謎なんは、「白石やめぇや…っ…!」と悲鳴みたいに、珍しく女の子らしい声を発したマコやん。

…ちょっと、待って、この状況…。


「…部長」
「何や財前」

「ちょ、待って、違っ…!ひか―」

パシーン!

え。

思いっきり財前が持ってたノートで白石の頭を叩いて、「アホやってんちゃいますわ」と罵ってから俺の腰に腕を回して俺を救った。小春とマコやんが素晴らしく輝いた瞳で手を振る中、俺はそのまま財前に拉致された。





HIKARU side


謙也くんの腕を引っ張りながら向かうは適当な場所。何となく思いついた保健室に謙也くんを連れ込んで、内側から思いっきり鍵を掛けた。

「ちょお、光…!さっきのはっ、え、んむっ…?!」

焦る謙也くんの唇を塞いで謙也くんの背に下から上へと手を撫で付けるように這わしてやる。力の抜けた謙也くんをええことに、俺は保健室のベッドに謙也くんを座らせて、そのままボスッと押し倒して、謙也くんの咥内を貪った。

「ンンッ…!ん、待っ…てや、話…んっ」
「わかってますわ」
「…ん、え…?」
「わかってるんで安心して下さい」

ぎゅう、と抱き込んで謙也くんのひよこみたいな頭を撫でてやって、やらかい髪に指を差し込んだ。
俺の下で、俺の服の袖をツンツンと引っ張って、意味わからなさげに眉を寄せる。

「ん…光…、どういう事?」
「まぁ、許可得たようなモンやし、と思ってこうして甘えさせてもらってるんすけど」
「???」

まだわかってない謙也くんの顔が面白くて、プッと笑ってしもた。俺の笑顔を見てホッとしたような、釈然とせんような微妙な顔をしつつ、俺の首に腕を回す。

「つまりですね、俺を嫉妬させようと面白がって先輩らが勝手に寸劇したんでしょ?小春先輩の呼び出しの電話の向こう側で、謙也くんらの声聞いてた上に白々しい状況作りでわかりやす過ぎっすわ、せやけど…俺が嫉妬してどうするか楽しみにしとったんやったら、部長のテリトリーでイチャついても文句言われませんよね」
「イチャっ…?!え、でも部活始まっ…」
「部長の責任でしょ」
「え、でもここ保健室っ…んっ」
「謙也くん」

顔を赤らめて、照れからか恥ずかしさで弱々しく抵抗する謙也くんの体を柔らかく抑えて首筋を攻める。ピクリと反応する謙也くんの耳たぶを甘噛みして、わざと低く囁いた。

「もしホンマに誰かに謙也くんが奪われるような事があっても、絶対そうはさせませんからね」
「ンッ…っ光…」
「謙也くんの事こうして閉じ込めるんで」

カァッと真っ赤に染まった謙也くんは嬉しそうに俺の肩に頭を摺り寄せた。

あーあ、やっぱり独占欲は隠し切れへんか。

今更、やもんな。


まぁええか…。
謙也くんが好きで居てくれる限りは、俺は絶対手放さへんねんし。


…抵抗をやめて目を穏やかに伏せた謙也くんに、またキスを送った。


もし自分が嫉妬しても、こうして謙也くんの事何度でも愛でようと思う。
…せやかて、ソイツよりも俺の方がええと思われたいし?





【完】
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