短文
□戯れ猫事情
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「・・・終わんねぇ」
通常勤務の隊士達はとっくに風呂を済まし各自就寝の支度をしているというのに副長土方は、未だ机に広がる始末書とにらめっこしていた。
もっともそんな仕事を作った原因は今日も無邪気に破壊活動に勤しんでいたどこかの隊長様にあるのだが。
「くそ、総悟の奴いらねぇ仕事させやがって・・・俺の貴重な睡眠時間を返せコノヤロー」
昨晩は松平の接待だと称した飲み歩きにオールで付き合わされた土方だった。
名目上「接待」な訳で酒は酔いが回らないよう舐める程度。
しかし無礼講だと飲まれるまで飲んだ近藤と松平のしつこい絡みにより心身共にピーク状態にあった。
そんな土方に追い打ちをかけるかのようにこの日は一日中現場。
その上のこの大量の始末書。
いっそ全てが土方を副長の座から落とし込める為の沖田の陰謀なのではないかと疑ってしまう。
そんな思考までネガティブになるほど疲れきっていた土方だが、廊下から近づいて来た足音に一層疲労の顔を濃くする。
足音は自室前で止まり、ガラッと勢いよく戸が開いた。
「見て下さいよ土方さん」
足音の主は土方が察した通り沖田総悟のものだった。
しかし沖田が両腕に抱えているものに目線を落とすなり、大きくため息をつく。
「ほらほら」と土方の目の前に突き出されたソレは「にゃー」と声をあげる。
沖田が抱えていたのは一匹の真っ黒な猫だった。