BL短編
□桜と春の恋模様
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温もったシーツの中から抜け出して、薄暗い部屋を照らすカーテンの向こうに”今日こそは”と祈りを込める。
大きく深呼吸した後、勢いよくカーテンを開いた。
「・・・はぁー」
「あらっフラン、今日もだめだったの?」
「はいー。まだ先みたいですねーこの調子だと」
「早く桜が見てみたいなんて、あなたも可愛いところあるじゃないの」
「黙れ変態クジャクオカマ。・・・全部ベルセンパイのせいですよ。桜見たことないってだけであそこまでバカにされるなんて思いませんでしたー。あー、むかつく」
「まぁ気長に待ちましょうよ。近いうちに咲くわよきっと」
一週間前、任務で殲滅したファミリーに日本人がいた。
冷たくなった死体の胸ポケットから桃色の花弁の押し花が挟まった栞がはらりと落ちて、赤に染まった。
『・・・この花・・・』
『あん?・・・あぁ、サクラじゃん』
『サクラ・・・ですかー?』
『もしかしてお前知らねぇの?しししっ』
この後散々バカにされて腹が立ったけど、センパイ曰くなかなか綺麗なものらしいので気になってしまう自分がいる。
「いつになったら、咲くんですかねー」