微熱ト戯言。

□ある時は儚い影の様に
1ページ/2ページ

「ある時は儚い影の様に」

さよならとかごめんねとか大好きとか愛してるとか。

いずれ消えて終うものを、
ぼくらは探していた訳じゃ
無いと言うのに。

ずっとずっと消えない。
ずっとずっとほどけない。
そんな、「絆」みたいなものをずっと求めていたのに。

いつの間にか、ぼくらが辿り着いたのは──…



「…っぁあ!!あ、っぁ…」

痛い。
痛い。

「いっ…」

苦しい。
苦しい。

痛いよ、零崎…。

「や、だぁ…っ!!ぜろ、ざ…っぅああっ!!」

何処で間違えたのだろう。
なにを間違えたのだろう。
誰が、間違えたのだろう。

決まってる。
この、罪深きぼくら
2人だ。

無理矢理に圧し拡げて奥を突いてくる零崎。
快感など、結局は痛みの二の次だ。

うつ伏せに押し付けられた身体。
髪が汗で張り付いて、非常に不快だった。

繰り返される律動は、
確実にぼくらの身体と心に傷を付けていく。

「…っ…、零崎、痛…ッ」

痛い。
痛いって言ってるじゃないか。苦しいのに。

「…っひ、ぁああっ!!」

突如、零崎自身が、ぼくの内側のある一点を突く。

弾ける欲望。
流れる涙。
頬を伝う汗。

零崎の情欲に濡れた瞳が、不意にぼくのそれと絡み合った。

「な、に…?」

身体を反転させられ、向かい合う形になる。

嫌に扇情的な眼で見詰めてくるものだから、ぼくは思わず喉を鳴らした。

「…ごめん。」

「え…?」

「無理矢理してごめん。」

「あ…、」

零崎。
零崎、零崎…

「ねぇ零崎…」

びくり、と、零崎が肩を震わせる。

「零崎は、ぼくのこと、好き?」

「ああ…」

「じゃあ、愛してる…?」

「愛してるよ」









「じゃあ零崎はぼくの事嫌い…?ねぇ零崎、零崎…」








「どうしてぼくを、殺さないの…?」






たった二人キリで、
ぼくたちはやってきた訳じゃない。

人間なんて、他に幾らでもいた。

沢山の人間を物体へと変えてきた零崎が、なぜぼくを殺さない?

「ねぇ、嫌い…?」

「……す、」

「嘘吐かないでよ。」

零崎は。
憎悪に歪んだ顔で、
ぼくの背中にある布団を叩いた。

しかしその憎悪は布団に向けられた訳でも、況してやぼく自身に向けられたものでもなかった。

恐らくそれは零崎自身に向けられたもので。

酷く歪んだ顔は、
俯いて小さく呟いた。

「…大っ好きだぜこの野郎」

「零崎、」

初めて。

「初めて見せてくれたね、零崎の本当を…」

「…うっせえんだ、よ!!」

「…ひゃぁあっ…!」

急にグッと押し込まれる零崎自身に、身体が跳ねる。

─なんだ零崎。
出来るじゃないか。

君も、所詮は人間だったんだね。
もう、君はぼくを殺すことが──出来ない。

---END------------------
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ