微熱ト戯言。
□ある時は儚い偽の様に
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『ある時は儚い偽の様に』
例えば君がぼく以外の誰かと楽しそうに笑っていたら。
例えば君がぼくじゃない誰かと抱き合っていたとしたら。
例えば君がぼくの事を嫌いになったとしたら。
ぼくはまた、笑顔で
嘘を吐くのだろう。
▼この気持ち、この言葉。
朝目が覚めたとき、隣に君がいなかった。
いつもなら、しつこいくらいに抱き付いたまま離れない程の零崎が。
「…、零崎…?」
家の中から物音はしない。
出掛けているのだろうか。
ぼくは静かに布団から抜け出し、まだ重い頭を覚醒させるべく大きく背伸びをする。
なんだろう、この気持ち。
隣に君がいないだけで。
なんだかとても、不安だ。
しかしだからといってどうすれば良いかも分からず、ぼくは小さく肩を落とした。
なんだよ、今さら。
朝起きたら1人、なんて。
そんなの昔は当たり前だったじゃないか。
「零崎…」
ああもう、落ち着かない。
ぼくは仕方なく携帯電話を手にし、縺れる指をなんとか駆使して零崎へと繋げる。
「……、」
3回、4回。
8回、9回とコールが続いて、ぼくは電話を切った。
「なんで出ないの…」
段々と不安に染まる。
いつもなら、すぐに電話に出てくれるのに。
…きっと、何か用事があるんだ。
邪魔したら、悪いよな。
ぼくは諦めて電話を置く。
「………、寝よう。」
再び布団に飛び込みながら、偏に想う。
いつからこんなに、零崎が大切な存在になっていたんだろう。
君がいないだけで、こんなに不安だなんて。
どうしてこんなに零崎に依存しているんだろう。
全く、傑作だよな…。
そして、ぼくは静かに目を瞑る。
次起きた時、その時は君が隣にいますように。
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