微熱ト戯言。
□だって君が最後にいいと言ったから。
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▼だって君が最後にいいと言ったから。
「なぁんだいーたん、また虐められたのか?」
鬱々と哀しみに満ちた表情で膝を抱えたいーたんは、高校に入ってからずっとこんな感じで。
しかしだからといって涙を流す事は決して無かった。
「だから俺から離れんなって言ってんのに。」
俯いたまま、ただ部屋の床を見詰め続けるいーたん。
「ほら、こっち来い」
「や、だ」
「即答かよ。意地っ張りめ」
「違うもん」
「もんって…」
「煩いなあ…っ」
顔を赤らめて怒鳴るいーたんに迫力なんてものは無かったけれど。
はあ、と小さく吐く溜め息に、感傷的な感情を抱いたのは確かだった。
「零崎…」
「んー?」
俯いたまま。
床を見詰めたまま。
「ちゅー、していい?」
………!!?
どうしたいーたん頭までイカれたか。
静かに顔を上げ、ただ視界に入れただけ、みたいな顔をして。
だけど真っ直ぐに此方をみて、いーたんは不安に顔を歪めた。
「ちゅー。いい…?」
「…どうぞ?」
「ありがとう」
ホッと笑って、頂きます、と。
子供の様な舌足らずな喋り方で小さく呟く様に言った。
触れあう唇と唇。
ただ触れるだけの、優しいキス。
少しだけ顔を離して、いーたんは俺の目を見た。
心臓が高鳴る。
痛いくらいに……
ああ、何を今更…。
「んな目で見んなよ、ばか」
「んっ…」
噛み付く様に唇を合わせ、戸惑ういーたんの髪を撫でる。
ぎゅっと目を閉じて俺の服を握るいーたんが、酷く愛しい。
「…っ零崎、もっと…」
「煽んなって…」
そんな物欲しそうな顔で見んなっつーの。
桜色のいーたんの頬。
あー、やめてくれ、
流されそうだ。
「…っ終わり」
「ぇ…?」
「もう終わり」
「なん、で…?」
なんでって…
勘が鋭いのか鈍いのかよく分からない奴だな。
「止まらなくなっちゃうだろ、ばかいーたん」
「ん…止めなくて…いよ」
ギリギリ聞こえるような。
ほんの小さな声で、
いーたんは笑った。
「零崎、好きだよ…」
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