微熱ト戯言。

□Summer!
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▼零崎 人識
▼玖渚 友
▼ぼく




「いーちゃんいーちゃん、もう夏なんだよ!!きゃっほーいっ★プール行こうプール!!!」
「はあっ!!?ふざけんな!!いーたんは俺とイチャこらすんだよブルーハワイ!!」
「ブルーハワイ!!?そうだいーちゃんかき氷食べよう!!プールサイドでかき氷とか最こ」


「煩いっ!!!」


▼Summer!


冒頭からわいわいと煩いのは、何故か勝手に上がり込んできた友と零崎だった。

零崎が上がり込んでくるのはいつもの事だったが、引きこもりの友が家へ来ることは珍しく、その上零崎と時間が被ってしまったのだから不思議なものだ。

入ってくるなりに友はプールへ行こう、と叫ぶし、零崎はいつも通り(え!?)家でごろごろするために枕を持ち出して来るしで、全くぼくの家はなんなんだろうとこの頃よく思う。

というかこいつらなんなんだろう本当に。

友は着ている真っ白なワンピースを翻して、零崎の方へ向き直ると、んべーっ、とさながら子供の様な仕草をしてその場にちょこんと座った。

その仕草に右の口角をひきつらせた零崎は、怒りを湛えた笑みを浮かべながら友から一番離れた場所──窓辺に座り込んだ。

しかし一番離れた場所と言ってもぼくの住む骨董アパートのこの部屋は四畳間、大して離れていないのが実際の所である。

その距離感に困ったぼくはとりあえず二人から等しい位置に座ったが、その逆三角形が妙に居たたまれない気持ちにさせた。

「で、何しにきたんだよ」

二人へ向けて放った言葉。
勿論何をしに来たのかなんてさっきまでの言い争い(?)を聞いていれば分かる事、ただ会話を続けるためだけに紡いだ言葉だった。

友は膝に置いた指をくるくると弄びながら、うにー、と小さく唸った。

「実はさあ、僕様ちゃん宅の冷房が壊れちゃって。冷房なしじゃPC出来ないし、なんか暑いからイライラしてたら直すつもりでいじり始めた冷房君がうにうに言い始めちゃうし。最悪なんだよもー」

…そうか、友にも直せない物があるのか。

「しかも部品が切れちゃって冷房君はもう直る余地がないし。輸血?そう、人間で言うなら輸血しなきゃいけないのに肝心の血液がないみたいな…」

だから気晴らしにプールに誘いに来た、と、友は無邪気に笑った。

買いに行けよ部品、とも思ったが、何度も言うが友は引きこもり、通販以外に購入手段があるのか謎なのである。

「で、零崎は?」
「んー、俺ー?俺は…」
「うん…?」
「えーっと…」

…無いのかよ理由!!!!
まあいつもの事だ。

「まあ敢えて言うならいーたんに絡みに来た?」
「黙れ零崎」
「更に言うなら寝に来た?」
「黙れ零崎」

あっけらかんと言う零崎に軽蔑の目を向けながら、ぼくは小さくため息を吐いた。

全く、どうしてぼくの周りはこうも意味の分からないやつばかりなのだろう。

さてどうしたものかと、ぼくが友を見遣ると、友はにこりと微笑み返しただけで何も言わなかった。

同じように零崎を見ると、にんまりと笑った零崎はすくっと立ち上がって、

「よし、プール行くぞ!!」

と叫んだ。
あ、れ?

「うに?零崎くんいーちゃんとイチャこらするんじゃ無かったの?」
「いやいや、玖渚ちんがプール行きたいっつったんでしょ」
「んじゃあプール行く?」
「おう行こうぜ!」

だからちょっと待てよ。
ぼくの意見は一切無視かよ。

きらきらと瞳を輝かせて、満足そうに微笑んだ友は、スカートを気にしながらもふわりと立ち上がった。

「よっしプール!!プール行くぞーっ!!」
「おーっ!!」

よし決めた、零崎をプールへ突き落としてやろう。

斯くして、ぼくらは悲惨な運命を導く事となる(棒読)。

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