Lost Heaven
□Lost Heaven 2
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見上げる空は、あの頃と何も変わらないのに。
ただ、隣に彼女だけがいない。
Lost Heaven 2
「シロちゃーん!お弁当作ってきたんだ、一緒に食べよっ!」
執務室の扉からひょこっと顔を覗かせた黒髪の幼馴染に、書類に目を通していた日番谷ははぁっと溜息をついた。
「雛森、何度言ったらわかる。”日番谷隊長”だ。」
眉間にしわを寄せながら睨んだところで、効果がないとはわかっていたが。
睨み付ける日番谷に、雛森はにっこりと笑顔を返した。
「いいじゃない、他に誰もいないんだから―――」
日番谷の顔がわずかに強張るのがわかったのだろう。
そこまで言って、雛森ははっと口を押さえた。
「ご、ごめんなさい・・・。」
「いい。気にするな。」
日番谷は気にしていない風を装って立ち上がった。
「外に出るのも面倒くせぇしな。部屋の中でいいか?」
「う、うん・・・。」
雛森が持ってきた弁当の中身を口にしながら、日番谷は呆れたように呟いた。
「ほんっと、お前は昔から料理の腕だけは上がらないよな。」
「な、ひどいっ!私だって少しは上達してるものっ!」
「どの辺が?」
揶揄するように笑ってみせれば、雛森がムキになったようにその顔を赤く染めながら睨んでくる。
他愛のない会話。
―――こうしていると、何もかもが昔どおりのような気がした。
「・・・ねぇ、シロちゃ・・・日番谷くん。新しい副隊長、断ってるって本当?」
しばらくして。
おずおずと聞いてくる雛森に、日番谷はぴたりと箸を止めた。
「・・・断ってるっていうか。決められねぇのは確かだな。」
ため息混じりにそう答えた。
平気なふりで口に出したつもりが、強がりだと思われたのか。
気遣わしげに、雛森が自分を覗き込んでくる。
「シロちゃん・・・。もう忘れた方がいいよ。そんなんじゃ、シロちゃんが壊れちゃうよ。」
―――それを、お前が言うのか。
とは、さすがに口にすることはできなかった。
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