Ash&Snow
□Ash&Snow 1
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高いビルの屋上で。
長い髪を風になびかせながら、一人の女が街を見下ろしていた。
美しく、そして奇妙な格好をした女だった。
深い金色の髪に、整った目鼻立ち。
険しく街のネオンを見下ろすその表情はひどくあでやかで。
不可思議な漆黒色の着物を纏い、腰には刀まで所持している。
「―――なるほどね。尸魂界が警戒するわけだわ。この街・・・・・・おかしすぎるわ。」
女は一人呟くと、街の一点を見据え―――ビルの屋上から高く跳躍した。
そのまま、女の姿は夜の闇に消えていった。
Ash & Snow 1
いつもの放課後。
帰宅途中だった冬獅郎は―――角を曲がったところで飛び込んできた目の前の光景に、思わず回れ右をしたくなった。
三人の柄の悪そうな連中に、冬獅郎と同じ制服の少年が囲まれている。
しかもその少年は、見慣れたオレンジ色の頭をしていて。
「―――問い1。あれは一体何でしょうか。はい、真ん中のお前!」
そんな声が聞こえてきて、冬獅郎は額を押さえた。
本気で見なかったことにしたかったのだが・・・電信柱のそばに倒れた花瓶を見つけてしまえば、そういうわけにもいかなかった。
オレンジ頭の少年は一人であっさりと三人を叩きのめすと、怒鳴った。
「二度とやってみやがれ!てめぇらにも花を添えなきゃなんねぇようにしてやるぜぇ!?」
その声とともに走り去っていく三人を眺めながら、冬獅郎はやれやれと少年に近づいた。
「やりすぎだ、黒崎。」
少年に声をかけながら、倒れていた花瓶を起こす。
「んぁ?――――――って、冬獅郎かよ。」
「日番谷だ。名字で呼べっつってんだろ。」
馴れ馴れしくすんな。
しかめ面で呟きながら、添えられた花を元に戻してやって。
「・・・ったく。腹が立つのもわかるが、あいつらには”見えてねぇ”んだから仕方ねぇだろうが。」
冬獅郎は言いながら一護の隣に立っている―――半透明の少女の頭をぽんっと撫でてやった。
明らかに人ではないその少女が、驚いたように冬獅郎を見上げる。
「・・・おぉ。何だか未だに感動すんな。俺以外にもこいつらに触れる奴がいるなんて。」
けっこう本気で言っていそうなその台詞に、冬獅郎はただ肩をすくめてみせた。
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