Ash&Snow

□Ash&Snow 4
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 ―――それは、ひどく不思議な感覚だった。

 闇に溶け込むかのような、その漆黒の装束。
 初めて手にするはずのその長身の刀は、ひどく手に馴染んでいて。

 何処かで―――遥か昔に。
 それによく似た体験をしたことがある気がした。
 けれど、それが何なのかを思い出すことは出来ず。

 考える間もなく、体が動いていた。
 気づいたときには、冬獅郎は一瞬で虚の体を両断していたのだ。


 そうして。
 ――――――振り返った視界の先で、金糸の髪の美しい女がぼろぼろの表情で泣きじゃくっているような気がした。
 行き場を見失い、何処かに迷い込んでしまった幼い子どものように、体中を震わせて。


 咄嗟に駆け寄ろうとしたのに、足は動かず。

 ―――そのまま、冬獅郎の意識は暗転したのだ。






  Ash & Snow   4   








 冬獅郎は弾かれたように起き上がった。
 生々しい夢の映像に、荒い息すら吐いている。
「夢・・・?」

 髪をかきあげ――――――一瞬にして昨夜の出来事を思い出し、ばっと視線をさ迷わせた。

 だが、視線の先に広がるのは何ら代わり映えのしない己の部屋だった。
 冬獅郎が切り伏せた化け物の姿は、跡形もなく消え去っていて。
 大きく破壊されたはずの部屋の壁も、綺麗に元通りになっていた。
 そして―――”松本乱菊”と名乗ったあの死神の姿も。

 何処にも、痕跡一つ残ってはいなかった。


 夢、なはずがない。
 それくらいにはっきりと覚えている。
 だが、それを確証するものは何一つなくて。

 まるで、狐にでも化かされたかのような気分だった。








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