Short Story

□Realize?
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 それは、日番谷冬獅郎の背丈が、副官の肩をようやく追い越した頃のこと。



 Realize?




 伊勢七緒の元に、十番隊副隊長である松本乱菊が尋ねてきたのは、職場から帰ってきてしばらく経った頃だった。
「相談があるの。」
 と。
 いつも明るすぎるほど明るい、瀞霊廷のムードメーカー的な存在であるはずの彼女は、今日はなぜかいつになく深刻な表情でそう言った。

「どうしたんですか?乱菊さん。」
 家に上がりこむなり、持参してきた酒を煽るように呑み始めた派手な友人の行動に、七緒は心配になってその顔を覗き込んだ。
「だから・・・相談があるのよ。こんなこと、口の堅いあんたくらいにしか相談できないし・・・。」
「それはわかりましたから。一体何のことです?」
 七緒は眉を顰めながら尋ねた。
 彼女の、こんな姿は本当に珍しかった。

「・・・絶対、他言無用にしてね?」
 上目遣いで念を押す様子に強く頷いてみせると、乱菊はしばらく逡巡した後、ゆっくりと口を開いた。 
「たいちょ、が・・・。」
「日番谷隊長が?」
 ―――やはり、と七緒は思った。
 この友人の心をここまで乱すことのできる人物、となると自ずとその存在はただ一人に限定される。
 
 だが。
 その次に続けられた言葉には、さすがの七緒も目が点になった。




「隊長が―――最近、私のことヘンな目で見るのっ!」




「――――――はぁ?」
 思わず、間の抜けた声を上げてしまった七緒を、誰が責められるだろう。

 何を言っているのだ、この人は。
 自然、冷ややかな眼差しになってしまう七緒に、乱菊がバン、とちゃぶ台を叩いた。
「ちょっとっ!止めてよ、その馬鹿にしたような顔っ!ホントに困ってるんだから〜っ!!」
 涙目になりながら訴える乱菊に、七緒は頭痛を抑えようと額に手を当てた。

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・一応、お話を聞いておきましょうか。どういうことです?」
「ちょっと!あんた、急に態度がぞんざいになったわよ!?こっちはホントの本気で悩んでるんだから、ちゃんと真面目に聞いてよっ!」
「ぞんざいにもなりますよ。真剣な顔をして何を言うのかと思えば・・・。あの日番谷隊長が?ありえないでしょう。逆ならまだしも。」
「逆って何よ!私が隊長のことヘンな目で見てるって言いたいわけ!?」
「ただの例え話ですよ。・・・それより、続きをどうぞ。」
 投げやりとも取れる態度で続きを促す七緒に、乱菊はものすごく不満な顔を浮かべたが。
 結局、続きを話しはじめた。




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