Lost Heaven

□Lost Heaven 8
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 ほんのひとときでいいから、その手が欲しいと思ったのだ。
 一瞬でも、あの人のぬくもりに触れられたら、自分は幸福なのだろうと。

 だから、構わなかった。
 その関係を続けることに、躊躇いはなかった。

 それでも―――ただ一つの覚悟だけは、ずっと胸の奥底に存在していたけれど。
 彼が、別れを切り出す、そのときのこと。
 そのときが来ても笑っていられるように、と何度も自分に言い聞かせていた。

 そうやって。
 いつか必ず終わりが来ると、ずっと覚悟していたはずだった。


 けれどそれは―――決してこんな終わり方ではなかったはずなのに。



  Lost Heaven 8 


  

 そのあたたかな体温がゆっくりと自分から離れていく感覚に、ふっと乱菊の意識は浮上した。
 かすむ視界の中、眠る乱菊を起こさないように慎重な動きで起き上がる銀の髪の少年の姿が見える。
 目覚めるときは、いつもそうやって気を使ってくれるところが、とても彼らしいと乱菊は思っていた。

 全身を襲う倦怠感の中、乱菊はぼんやりと日番谷が身支度を整えていく様子を眺めた。

 日番谷は、見つめる乱菊に気づいていないのか彼女に背を向けたまま淡々と準備を進めていく。

 まだまだ少年らしい―――均整のとれた体。
 その姿を見つめながら、乱菊は彼の目覚しい成長ぶりに今更ながら感じ入っていた。

 この数年で彼の背丈は順調に伸びまくっていた。
 ちょっと前までは本当に小さな子どもだったはずなのに、今ではその背は168センチ。
 ほとんど乱菊と変わらないくらいだ。
 この分だと、自分を追い越すのも時間の問題だろう。

 ・・・一見して細身に見えるその体がどれほどたくましく力強いかということも、乱菊は嫌というほど知っていた。




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