Ash&Snow
□Ash&Snow 10
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Ash & Snow 10
昨日と違って今日は玄関からのお邪魔ですね〜。
カンに触るほど無邪気な笑顔でそんな軽口を言いながら。
冬獅郎のマンションに案内された乱菊は―――何故か眉間にしわを寄せて何かを考え込んでしまった。
「おい?何してんだ。さっさと上がれ。」
「はい、お邪魔します。・・・・・・昨日も思ったんですけど。日番谷くん家って物が少なすぎません?」
乱菊の放った一言に、冬獅郎は瞳を瞬かせた。
何かと思えば、そんなことを考えていたのか。
「普通だろ。」
特に気にもせずに返事をすると―――乱菊が何故かむっとしたように詰め寄ってきた。
「普通じゃないです!私なんて家中、物で溢れかえってますよ!!」
「・・・お前と一緒にすんな。」
なんとなく彼女の家の中が想像できてしまって、冬獅郎は一蹴した。
だが、乱菊は納得できなかったのだろうか。
ものすごく不満そうに、冬獅郎の両肩をがしっと掴んできた。
「もっと好きなものとか好きなこととか!ないんですか!?それでいいんですか!?もっと人生を楽しく謳歌しちゃってくださいよっ!!」
言い募る乱菊の様子が―――あまりに必死な気がして。
冬獅郎は困惑した。
「・・・・・・お前に俺の人生のことまで心配される筋合いはねぇぞ。」
「確かにないですけど!心配になるのは仕方ないじゃないですか・・・!」
そう力なく肩を落として。
乱菊は大げさなまでに額を押さえ、深々と溜め息をついた。
「・・・そういうとこはホンット・・・・・・・・・。」
―――変わってないんだから。
「?何だよ。」
聞き取れないくらいの小さな声音で呟かれ、冬獅郎は聞き返した。
「・・・何でもありません。ただのたわ言です。」
静かにそう告げる―――寂しげな乱菊の姿に、冬獅郎は本当に戸惑ってしまった。
何故、彼女がここまで深刻な顔をしているのだろうか。
―――わけのわからない女だ、と。
冬獅郎は腑に落ちない心持ちでそう思った。
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