Ash&Snow
□Ash&Snow 11
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後悔、自己嫌悪、やりきれなさ――――――。
そんなものばかりが脳裏を巡る。
―――馬鹿なことをしてしまった。
本人の前で、彼の死を悼むなんて。
彼に関わることになってしまった瞬間に、誓ったはずなのに。
決して、自分の本心と―――過去の事象だけは悟られないようにすると。
そのくせ、彼には心を開いて欲しいだなんて。
どうして自分はこれほどまでに弱くて。
どこまでも―――身勝手なのだろうか。
Ash & Snow 11
冬獅郎が風呂から上がってきたとき。
乱菊はすでに元の調子を取り戻していた。
「あ、日番谷くん!すぐ出来るんで座っててください!!」
キッチンで野菜を刻んでいた乱菊に、にっこりと振り向きざまに微笑まれる。
その笑顔に―――何の陰りも見出すことができなくて、逆に冬獅郎は戸惑ってしまった。
「勝手に戸棚とか空けちゃったんですけど、よかったですか?」
「・・・あぁ。」
頷きながら、複雑な気分になる。
先ほどのことがまだ心に引っかかっていて。
はっきり言って気になるし、不安にも似た気持ちが消えてくれない。
ずっと底抜けに明るかった彼女が、一瞬だけ見せたあの表情。
けれど―――それと同じくらいに、今笑顔を見せてくる乱菊にほっとしているのも事実だった。
―――こいつは、笑っている方がいい。
ふと、そんな風に思ってしまって。
そんな自分にうろたえる。
何を、考えているのだろうか、自分は。
会ったばかりの女に対して、何を。
気の迷いを振り切るように、冬獅郎はリビングへと向かった。
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