Ash&Snow

□Ash&Snow 4
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 その日の朝。
 井上織姫は、廊下の先に目立つ銀色の髪を見つけて微笑んだ。
「あ、おっはよう、冬獅郎くん!!」
「・・・井上。日番谷って呼べっつってんだろ。」
 ぶんぶんと手を振って挨拶するも、幼馴染の彼は相変わらずの仏頂面で。
「それから。何度も言ってるが不必要に俺に話しかけてくるんじゃねぇ。お前までとばっちり食うぞ。」
 すたすたと織姫の横を通り過ぎながら、冬獅郎はそれだけを言った。
 慌てて織姫はその背中を追いかける。
「とばっちりって・・・。別に冬獅郎くんは皆から仲間はずれにされてるわけじゃないよっ。むしろ皆ホントは冬獅郎くんと喋りたいってすっごく思ってるんだよ?それなのに、冬獅郎くんが」
「―――井上織姫。」
 言い募る織姫の言葉を遮るように、冬獅郎が低い声音で彼女を呼んだ。
「は、はいっ?」
 フルネームを呼ばれ、条件反射的に織姫の体がびしっと真っ直ぐになる。
 そんな織姫を無表情に眺めて。
「日番谷、だ。言ってるそばから名前で呼ぶな。」
「ご、ごめんなさい・・・。」
 しゅんとうなだれる織姫を残して、冬獅郎はさっさと教室に向かってしまったのだった。




「あーあー、見ていらんないね、全く。」
 後ろから声をかけられ、織姫が振り向く。
「たつきちゃん!と、く、くくくくく、黒崎くん!?」 
 黒髪の友人と――――――オレンジ髪の想い人の姿に、一瞬にして織姫の顔が真っ赤に染まる。

「おい、一護。アンタからもあの氷のオウジサマに言ってやんなよ。織姫があーんなに心砕いてあげてるってのに、何なの、アイツのあの態度は!」
「俺に八つ当たりすんなよ。」
 たつきの剣幕に、一部始終を目撃していた一護も、溜め息混じりに言った。
「それに、俺からも何度も忠告してやってるっつーの。けどあいつの返事はいつでも『大きなお世話だ』の一点張りだ。」
「ご、ごめんね、黒崎くん・・・。」
「井上が謝ることじゃねぇだろ。」
 一護と織姫は二人で顔を見合わせて、深々と溜め息をついた。
「・・・あいつもなぁ、悪いやつじゃねぇのになぁ。」
「だ、だよねっ!そうだよね!?」
 織姫は顔を上げると、ぱぁっとその表情を輝かせる。
 だが、その隣でたつきは顔を思いっきりしかめさせた。
「―――そうなの?ぶっちゃけアタシには見たまんまの、目つきの悪いチビのチンピラにしか見えないんだけど。」
「チンピラって、お前・・・。」
 たつきはどうにも冬獅郎が気に食わないらしく、けっとした表情で言い切った。

 織姫が慌てた様子で声を上げる。
「とっ、冬獅郎くんはいい子だよっ!私が昔いじめられてたときも助けてくれたし!私がおやつ落としちゃったときには何度も自分の分くれたりとかしてくれてたんだから!!」
 前半はともかく、後半部分は・・・何度もあったのか、と一護は思ったが敢えてそれを指摘はしなかった。
 織姫が、困ったように微笑む。
「けど、高校入ってから黒崎くんが冬獅郎くんと仲良くなってくれてよかった。・・・ありがとう、黒崎くん。」
「へ?いや、いーんだよ。別に俺から仲良くなろうとしたわけじゃないし。あいつの方から話しかけてきたんだよ。」
 さらりと述べてから、一護はしまった、と思った。
 案の定。
「「えぇえええええええぇっ!!」」
 織姫とたつきの絶叫が、見事にハモる。
「そ、そうなの、黒崎くん!?」
「一護!!どーいうことさ!?あの無口で無表情で無愛想な氷の王子がアンタなんかに話しかけてきただってぇ!?一体アンタの何がヤツのお気に召したっていうのさ!!?」
 ずいっと迫ってくる二人に、一護は思わず後ずさった。

 口を滑らせたことを一瞬で後悔する。
 冬獅郎から一護に話しかけてきた―――というのは間違いではない。
 だが、その状況を人に話すのはかなり・・・抵抗・・・というより無理があった。
 何せ、冬獅郎が一護に話しかけてきたのは―――二人の間に共通する”霊感”と、一護の超ウルトラ級の霊媒体質がきっかけだったのだから。









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