Ash&Snow
□Ash&Snow 10
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「ねぇ、日番谷くん。ちょっと冷蔵庫の中見てもいいですか?」
「・・・あぁ。」
さっさと話題を変えようと遠慮がちに尋ねる乱菊に、冬獅郎が投げやりな気持ちで頷くと。
乱菊は冷蔵庫の中身を確認して―――微笑んだ。
「自炊してるんですね、たぃ・・・・日番谷くん。」
「一人暮らしが長いからな。」
さらりと返事をすると、乱菊は冷蔵庫の中を見つめながら何やらぶつぶつと呟きはじめた。
「・・・この分なら大丈夫そうかしら。」
「何の話だ?」
彼女の言動の意図がつかめずに冬獅郎が尋ねると。
乱菊は―――ひどく優しげな笑顔を、冬獅郎に向けた。
「・・・とりあえず。おいしいものを食べることから人生の楽しみを教えて差し上げます。今夜は私がお夕飯作りますんで、日番谷くんは適当にくつろいでてください。」
その―――今までのものとは明らかに違う、綺麗な微笑みに、一瞬目を奪われる。
だが、言われた言葉には懸念を抱いた。
「夕飯?・・・・・・・・・・・・・・・お前に作れるのか?」
ものすごく意外な気がして。
冬獅郎は、心底疑わしい眼差しを向けてやった。
乱菊が心外そうな表情を浮かべる。
「しっつれいですねぇ。昔はよく―――」
言い募る乱菊は、何故か途中で言葉を途切れさせた。
同時に、彼女の顔が強張る。
「―――どうした?」
思わず問いかけていた。
彼女の顔が、傍目にもわかるほど青ざめていたから。
冬獅郎の気遣わしげな視線に、乱菊が表情を取り繕うのがわかった。
そして。
―――いっそ無理やりとも思える仕草で彼女は微笑んだ。
「・・・いえ。昔はよく、上司とかに作って上げてたんです。お弁当とか夕食とか。」
「上司?死神に階級みたいなもんがあるのか?」
「・・・はい。」
冬獅郎の疑問に、乱菊は肯定で返事をして。
そのまま、静かに瞳を伏せた。
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