mainT 短編・中編

□クオリア
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「薫!ちょっと!手痛い!」
 
「!わ、わりぃ……。」
 
「もう、ビックリした!
 あ……カバンぐらい自分で持つよ。」
 
「いや……これくらい、大丈夫だ。」
 
「そう?でもさ…手、ちゃんとつなげないから、
 やっぱり自分のは自分で持つよ。」
 
「……。わかった。」
 
 
突然部室を出てきたこと、りみは怒ってるかと思ったが、そんなことはないらしい。
それにしても、りみと手をつなぐのは久しぶりだ。
いつもなら、恥ずかしいから大きい通りに出たら離すけど、
今日はいいか、なんて思う俺は相当りみに会いたかったんだと感じる。
いや、校内ですれ違うくらいはあったけど。
 
 
「久しぶりだね。手をつなぐのも、一緒に帰るのも。」
 
「あぁ。」
 
「……薫、怒ってる?」
 
「何でだ。」
 
「いや、だって……その、さっき菊丸が……。」
 
 
なんだ、わかってたのか。だったら尚更質が悪い。
 
 
「別に怒ってねぇ。」
 
「そう?なら良いんだけど……。
 …ねぇ、今日ウチに寄って行かない?」
 
「りみの家?」
 
「うん。あ、用事とかあるなら、全然いいんだけど!
 その……話したいことがあって……。」
 
「いや、用事はねぇけど……。」
 
「なら、寄って行って。」
 
「あぁ。」
 
 
話したいこと?何だ……。
 
 
「あ、コンビニ、寄って行かねぇか?」
 
「いいけど、何で?」
 
「手ぶらでりみの家に行くわけにはいかねぇだろ。」
 
「いいよ、そんなの。ヨーグルトもジュースも、ウチにあるから。
 ふふっ、薫ちゃんは相変わらず礼儀正しいのね。さすが部長。」
 
「『薫ちゃん』は止めろ。」
 
 
でも、やっぱり手ぶらで行く気にはならなくて、
コンビニに寄ってお菓子を買ってりみの家に行った。
 
 
「ただいまー。」
 
「おかえりなさい。あら!海堂くんじゃない!久しぶりね!」
 
「おばさん、お久しぶりです。これ、どうぞ。」
 
 
俺はさっき買ったお菓子をおばさんに渡した。
 
 
「あら!わざわざありがとう!ゆっくりしてってね!
 そうだ!お夕飯食べてく?」
 
「いいえ、お気持ちだけで十分です。ありがとうございます。」
 
「そんな遠慮しなくていいのに!」
 
「お母さん、ジュースとヨーグルト持ってきて。」
 
「はいはい。」
 
 
りみの部屋、久しぶりだ。
以前来たときよりも、本が増えている気がする。
勉強机の上にも色んな参考書らしきものが積んである。
 
 
「ごめんね、散らかってて。適当に座って。」
 
「……勉強、大変そうだな。」
 
「あぁ、参考書とか問題集、欲しかったらあげるよ?」
 
「いや、いい。」
 
「そう?」
 
「りみ、入るわよー。」
 
「どうぞー。」
 
 
おばさんがジュースとヨーグルトとジャムのビン?と俺が買ったお菓子を持ってきてくれた。
 
 
 

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