■Dark種Book■
□◇fade-out◇
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fade-out‐(ザラキラニコ)
「こっちだ。足元が暗いから気をつけて」
「地下に行くんですか?」
「そうだよ」
血のように紅い照明のライトを浴びて、薄暗い階段を降りる二つの影がちらちらと揺れる。
「キスされたんだって?」
「え?」
唐突に始まった話。低く声色を落とし、内緒話の様に話し出したアスランにニコルは困惑の瞳を向けた。
50分の1の可能性で、好きな人の好きな人と相部屋になってしまった
望まないまま過ぎた数ヶ月に渡る相部屋生活の中で
酔った彼に、一度だけキスをされた
『君のこと‥ちょっと好きだったんだ』
驚いて動けずにいるニコルの肩によりかかって寝てしまったキラは、翌朝何も覚えていなかった
それは自分しか知らないほんの些細な出来事
誰にも話していない
「迷惑だったろ?」
「いいんです。彼酔ってましたから」
階段が終わり、暗闇の中に物々しい鉄の扉が現れる。
「アスラン、これは‥」
「見ればわかる」
ずっと憧れていた綺麗な手が無駄の無い動きで錠を外し、重い音をたててノブを回す。
「‥‥」
部屋の中央で膝をかかえてうずくまる見知った少年。細い背中は、限界を向かえていた。
「改めて紹介するよ、ニコル。幼馴染みの‥キラだ」
振り返った明るい茶髪の下で、紫の瞳が驚愕の色を浮かべる。ニコルはなるべく見ないように頷いた。
「最近食欲が無いんだ」
優しい声色で、アスランは言う。
「どうも俺の飼い方が悪いらしい‥。手なづけた時の手本を見せてくれないか?」
ニコルはゆっくりと顔をあげた。アスランの形の良い唇が、困ったフリをして笑う。
「‥彼は酔ってたんです」
「キラは、君に酒の力を借りて告白した。自分でそう話したよ」
誰にも罪は無い
けれど
喉をからして叫んだところで
彼は許してくれない
end
キラを慰める(性的な意味で)為に一緒に飼われることになったニコル。