SSS
□乾いたあなたに潤いを
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ふああ、と退屈な時間に見合った欠伸をしていると、不意に部屋のドアがノックされる。
「ふぁあい」
「お嬢様、御堂でございます。失礼しても宜しいでしょうか」
「(御堂さんだっ!!)はいどうぞー」
何気なく返事してるけど、本当は嬉しくて仕方がない私。
綻ぶ笑顔を綻ばせ過ぎないように抑えながら振り返ると、何やら大きな紙袋を持った御堂さんが佇んでいた。
「どうしたんですか?」
「最近何やら乾燥した天候が続いているようですので、勝手ながらも私の方で用意させて頂きました」
にこりと笑みを浮かべながら私の目の前に紙袋の中から次々とスキンケア商品を取り出し広げ始める。
ちょうど欲しかったんだよね、とか思いながら商品の一つを手にとってまじまじと見ていると、あることに気付く。
「これって、御堂さんが全部揃えてくれたの?」
見上げて聞いてみれば、ちょっとバツの悪そうに微笑んだ御堂さん。
「はい……、実を言うと天候ではなく……お嬢様が肌荒れや唇の乾燥に悩んでらしたのを耳に挟みましたので」
「え、ほんとに?ありがとうございます!」
私の中での最上級の笑顔でお礼を返せば御堂さんも目を細めてとんでもございません、と返してくれた。
もしかして、前のティータイムの時に「最近手と唇がカサカサする…とか言ったのを覚えててくれたのかな?
だとしたら嬉しすぎる。
でも、あんな独り言みたいなの、さすがの御堂さんでも覚えてはいないだろう。
ちょっとつけあがっちゃったかな、とくるくると指で回してたリップからさり気なく御堂さんに視線を移すと、パチッという音似合うくらいに綺麗に目が合った。何も言わず、ただほけ、と御堂さんの綺麗な顔を見つめ続けてしまう私。
何となく目が逸らせない。
するといきなり頬に伸びてきた白くしなやかな指。
驚いて先ほどまで開けたままだった唇をキュッと結ぶ。
「お嬢様」
少し、唇が乾燥されていらっしゃいますね。
と言った御堂さんの暖かくしっとりとした唇が私の唇をなぞった。
乾いたあなたに潤いを
唖然としたままの私に笑い掛けつつ沢山使って下さいね、と笑みを含んだ言葉を残して御堂さんは部屋を出ていった。
「ん、リップだ…」
1人きりになって、無意識に指を唇にあててみると私の唇に僅かにリップが付いていた。
……御堂さんも唇のカサカサに悩んでたのかな、なんて的外れな事考えてたなんて、唇が割れても言えない。
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