SSS

□確かな恋
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※<電池>と繋がってます。

最初にあなたを見たとき、どこか胸が騒いだ。


日々日々増えてゆくあなたの表情に癒やされる私がいて、それとなく惹かれていく自分がいて。

しかし、ある期を境に頻繁に話し合われるようになった縁談、いわゆる見合い話に耳を塞いでしまいたくなる。

ただ、毎度どんなに良家との縁談であっても断り続けるお嬢様をみて不謹慎ながらもどこか安心していた。

そしてその話し合いが行われた後には必ず躊躇いがちに私に紅茶を淹れて欲しいと憂いを含めた瞳を見て、更に揺れた心。


気が付けば愛しいと思う感情に体が制御出来ず、お嬢様を抱き締めてしまった。

今こうやって自分の腕の中にいるのは、愛しく、大好きな人。

でもこうして触れる事さえも許されなくなる日が来るのだろう。

そう思えば思うほど意地でも離したくなくなる私は執事失格なのでしょうか。

「み、どうさ…」

離して…、と涙ながらに聞こえた小さな抗議に今は聞こえないフリをする。

その行為に対抗するようにお嬢様が私の胸を押して抱擁から逃れようとするも、その力が余りにも弱々しく男である私の力には適う筈も無い。

更に頭を抱き寄せ、腕の中に押し込めるように抱きしめれば、抵抗する手が下ろされ、そして暫しの間を置き、躊躇いがちにて私の背中に回された。

言葉の無いまま、ただ抱きしめ合う。

少しして、きゅっと抱きしめ返す力が強まったかと思いきや、お嬢様が顔を上げる。

瞼の淵が僅かに赤くなり、涙を潤ませ揺れる瞳に吸い込まれそうになりながらも余裕の無い笑みを返せばお嬢様の瞳から涙が次々と溢れ出した。

「御堂さんの事が好きすぎて、仕方がないのに……いつか離れなきゃいけないなんて」
悲しいよね、と無理に作られた笑顔が痛々しくて、知らぬ間に自分の瞳からも涙が零れ落ちていたなんて。



確か


(私もお嬢様が好き過ぎて仕方がありません、そう言った後にまた拭ったあなたの涙の感触が、忘れられなさそうで。)




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