SSS
□離したくない
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「笑って下さい、ほら」
「み……ど…う……さ…っ」
押し付けられた肩が痛い。
と言うより怖い。
笑ってと言われたって…誰がベッドに肩を押し付けられて、のしかかられて更には拘束具を手にした人に抑え付けられて笑えるのだろう。
ちくりとした痛みは心だけでなく、鎖骨周りや首筋にも感じる。
「お願い、許して……」
泣き喚いて腫れた喉から出た掠れる声なんて彼を説得出来る力を持たない。
「許して……?あなたは相変わらず……」
愚かですね、と薄ら笑みを浮かべて吐き捨てたその表情があまりにも冷たくて、私はまた涙を零す。
「泣かないで下さい。お嬢様には笑顔が一番ですよ?」
そう言ってキスを落とした御堂さんは、声こそ優しいけれども そこには優しさなどこれっぽっちも含まれていない。
「好きだから、御堂さんの事、愛してるから……お願い、私を離して下さい!」
涙やらなんやらで崩れた顔を更に崩しながらも懇願する。
本当に御堂さんが好きだった。愛していたのに、
ううん愛し合ってはずなのに……。
私がいけなかったの?
「あなたがいけない。あなたがあの方と一緒に寝たりするから……。一体何をしてたのです?」
やっぱり私がいけないのか。
でも………、
いつ?どこで?だれが誰と?とありもしない御堂さんの証言に逆に詰め寄りたくなるのは事実。
けれど今の私にそんな事を言える余地はなくて。
「私は、御堂さんだけを愛してるんだよ…?」
振り絞って口を出たのは
ごちゃ混ぜになった頭を無理やり整理して、やっと出た結論。
言うなり肩を押し付ける力が弱まり、徐々にいつもの優しい微笑みを浮かべた御堂さん。
だけど次には信じられない程に冷たく低く囁かれたその言葉にぴたりと思考も涙も停止した。
「あなたを一生離したくない」
(否定なんて唇で塞いでしまえば良いのです)
いつもなら嬉しいはずの言葉に今は絶望を感じてしまうなんて。
歪み始めた彼からの愛は止まる事を知らない……故に私は彼からの愛によって傷付いていくんだ。
再び唇に落とされたキスは酷く冷たいものだった。
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サディストなのかヤンデレなのかなんじゃごりゃぁあああ
一番歪んでるのはこんな御堂さんを書き上げた私だ……。
御堂さんごめんなさい。