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□return to you *
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「アーレーンーんん?」


ある日の昼下がり。たった今任務から帰還したばかりのオレは、コムイに報告書を提出したその足で非番だというアレンの部屋にやって来た。

任務中も今何してんのかなとか寂しくて泣いてんじゃないかとかユウにイジメられて…ってそれはないさね。とにかくアレンのことばかり考えていたから久々に会える喜びに自然と頬が緩む。

オレを見て心底安心したように微笑み、おかえりなさいなんて言ってくれるアレンを想像しながら意気揚々と部屋のドアを叩いてみたわけだが――応答ナシ。
ドアノブを捻ってみると何の抵抗もなく開き、悪いとは思いながらも部屋に入らせてもらうことにした。

「おやすみ中さぁ」

そこにいたのは午後の穏やかな日差しが降り注ぐベッドで、すーすーと寝息を立てて眠るアレン。体を緩く丸めて眠る姿は子猫のようで。ゆっくりと足音を殺して近づき、起こさないようそっとベッドに腰掛けた。
まつ毛長いとか肌白いとか薄く開かれた唇にキスしたいとか、そんなことを考えながらアレンの髪に指を絡めて遊ぶ。

「んっ……ら、び……」
「!?」

突然名前を呼ばれて心臓が跳ねる。咄嗟に手を離したが、どうやら無意識の内に頬や唇にまで触れていたようだ。しばらく様子を見ているとアレンはまた規則正しい寝息を立て始め、ほっと胸を撫で下ろす。

それにしても指だけでオレだって分かってくれるなんてほんと可愛いさぁ。自分でもアレンの寝顔を見ているだけで顔が綻ぶのが分かる。けれど同時にふつふつと、ドス黒い欲望も湧き上がる。

「アレン…」

愛しい肌の感触が残る指先を握り締め、ゆっくりと動き出す。ベッドに膝を掛け小さくスプリングを軋ませながらアレンの上に跨がり顔の両脇に手を付いた。

(捕獲、完了…)

眼下にいる獲物に不敵に笑った。そして身を屈め、薄く開かれた唇を塞ぐ。

「ふっ…ん……っ」

突然奪われた唇と絡められる舌にくぐもった声を上げ、弱々しいながらも抵抗を見せるアレン。それをやんわりとあしらいながら本格的に邪魔される前にいただくことにした。
手早く上をはだけさせ下も全て取り払う。そして後孔にゆっくりと指を沿わした。幾度も交わったそこは容易に俺の指を飲み込む。

「…ぁっ…ふっ……ん…」

弱い所ばかりを攻めると次第にアレンはそれに従順に溺れてゆく。未だ虚空を見つめ覚醒しきれていない瞳も、徐々に熱を持った涙で潤んでいった。

「ぁっ…ん……ら、び…?」
「…っ」

寝起き特有の少し掠れた声で名前を呼ばれて胸が熱くなる。長い間任務のすれ違いで会えなかったのもあってもう余裕はなかった。早々に指を引き抜き、緩んだそこに自身を宛てがう。ゆっくり身体を沈めると、ひくつくそこは確実に自身を飲み込んでいった。その温かさに、どうしよもなく満たされる。

「アレン、アレン…」

名前を呼び労るように頭を撫でてやると、天井を見つめていた瞳がゆるゆると動き俺の顔に焦点が合う。

「ら、び……?全く…ッ何やって……ひっ…」
「ごめんさアレン…でも話は後」

物言いた気な顔に優しくキスをするともう一度全く、と言われてしまった。けれどその表情は柔らかく、文句を言いながらも俺の首に腕を回してくれた。

「ッ…ふぁ……っん」
「最高…っ、会いたかったさ…アレン…」
「あっ…僕も…ッ無事でよかっ……ぁぁ…ッ」

目覚めると共に格段に良くなった締め付けにどうしよもない喜びを感じながら、切羽詰まったアレンの声に絶頂が近いことを悟り自身も腰を使う。

「ぁッ…あ…いっ……ん…ぁッ」
「ああ…一緒に……っ」

前も同時に扱いてやると手の中のものがビクっと震えて、きつくなる締め付けに自分も欲を放つ。達する間際に零された吐息と恍惚とした表情が堪らなく愛おしくて。

「アレン…っ」

全てが満たされるのを感じた。そっと抱きしめ精一杯の想いを込めて名前を呼ぶ。優しく遠のく意識の中、その肌の温もりだけは鮮明に感じられた。















「…強姦、変態、節操なし、不法侵入」
「悪気はなかったんさ…」
「当たり前です!!」

極力オレから離れるようにベッドの隅っこに身を寄せるアレン。申し訳程度に纏われたシーツを自身の身を守るかのようにギュッと握り締めている姿が妙にいやらしくてまた襲いたくなる…なんてのは、今のアレンには到底言えない。

「……鼻の下、伸びてますけど」
「ぅぇえ!?そ、そんなことないさ!」

慌てて笑顔を取り繕う。アレンは冷ややかな目線を送った後ふいっとそっぽを向いてしまった。これ以上煽らないようにと改めて表情を引き締める。

「……寝込みを襲うだなんて」
「た、たまたま任務が早く終わって、帰ってきたらアレンが非番だって言うからテンション上がっちゃって……ほんとごめんさ」
「………」
「アレン、こっち向いて?」
「………」
「アレン」
「っ…!」

なかなか折れないアレンにこっちから仕掛けることにした。ゆっくりと後ろから近づき抱き寄せて、耳元で名前を囁く。いつもより低めの声で、優しく。

「んっ……ラビっ…その声…っ」
「許して欲しいさ」
「っ……バカラビ…」
「許してくれるさ?」
「…許し、ます」

観念したように俺の腕にそっと手を添えて呟く。オレは腕に込める力を更に強くした。そして首筋に痕を残す。

「…んっ、ラビ…今度はちゃんと起こしてくださいね…?じゃないと、真っ先に言えないから」

アレンがオレに身を預けながら大きな瞳で見上げてくる。

「おかえりなさい、ラビ。待ってました」

そう言って贈られた触れるだけのキス。


「…ああ、ただいま」


――ただいま、アレン。
オレもずっと、言って欲しかった。



fin. 20101225



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