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□First Christmas *
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「雪が、雪が降って来ましたよラビ!」
ふわふわと窓の外を舞い落ちる灰のような雪に思わず手を伸ばす。手の平に落ちたそれは瞬く間に溶けて、どうやら部屋の中でテーブルの準備をしてくれている恋人には見せられそうにない。
「うおっアレン!?そんなに乗り出したら落っこちるさぁ!」
振り向いた先には綺麗に並べられた七面鳥にローストビーフ、クリスマスケーキ。全て任務の帰りに買って来たものだ。日暮れまでに無事イノセンスを回収して、こうして好きな人と迎えられた聖なる夜。
「大丈夫ですよ、ラビは心配しすぎなんですから」
そう笑って、また雪に視線を戻した。
ラビと出会ったのも、こうして雪の降る寒い日のことだった。
ノアが人だと知り動揺を隠せなかった僕。頭を冷やそうと左目が潰されていることも忘れて向かった街中で、初めて守るべき人間を怖いと思った。その矢先に後頭部に突き付けられたアクマの銃口。それを間一髪のところで助けてくれたのがラビだった。頭に血が上った僕をラビが追って来てくれていなければ、僕は今頃ここには居ない。
そんな懐かしい記憶が、雪に誘われ胸を過る。
あの唐突な出会いからしばらくして、ラビから告白を受けた。最初は戸惑ったけれど不思議と嫌ではなかった。今ではこうしてラビの側にいられることがこの上なく幸せに感じられてしまう程に。
「…レン、アレン!」
「わっ!あ、ラビ」
「準備、出来たさ」
ハッとして振り向くとテーブルの上には豪華な食事に加えキャンドルまで灯されていて、ソファに座ったラビがポンポンと自分の隣を叩いていた。
「ラビ…準備任せちゃってすみませんでした」
「いーの、俺が引き受けたんだから。それより見て欲しいものがあるんさ」
「でも…、んっ…」
アレンが座ると同時に腰を抱き寄せて、まだ言葉を続けようとする唇を塞ぐ。真っ赤になったアレンの顔に、にっと悪戯っぽい笑みを向けてから、目の前にあるケーキの箱をそっと取り外した。そして精一杯の思いを込めて、君に。
「誕生日おめでとう、アレン」
「わっ…!これ、僕の名前…!」
「そ、オレからのプレゼント。アレン適合超特大ケーキさ!」
そこに現れたのは巨大なホールケーキ。白いクリームの上には真っ赤なイチゴが宝石のように並べられていて、中央のプレートには"Happy Birthday Allen"とチョコレートの文字が刻まれていた。
「覚えていてくれたんですね…!僕、クリスマスケーキかと思っていました」
「へへーん!当たり前さ!キリストよりアレンの方が大事だしな」
目を輝かせるアレンにそう戯けてみせると恥ずかしそうに伏せられる瞳。無防備な額にキスをして、もう一度小さくおめでとうと囁いた。