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□Oath upon a Star
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燃え盛る炎を見つめながら深い溜め息をつく。吐き出された白い息はすぐに冷たい空気に溶けて消えた。

ここは砂漠のど真ん中。視界を遮るものは何一つなくひたすら乾ききった大地が続いていた。
けれどそれは日中のこと。日没を迎えた今は果てのない大地すら確認できず、ただ周囲には全てを飲み込むような漆黒の闇が大口を開けて広がっているだけ。どこから何が来るかも分からない。
日中の噎せ返るような暑さが嘘のように、底冷えする寒さまで恐怖と共に身体を突き刺す。こんな場所で一晩を過ごすだなんて命取りだと子供でも分かる。

それなのに、僕とラビは何の備えもないまま砂漠のど真ん中。頼りになるものと言えば目の前で揺らめく焚き火くらいで、地面に腰を下ろしてただひたすら夜が明けるのを待っていた。

簡単に言えば遭難中。しかも僕のせいでときたものだから居た堪れなくて仕方がない。ぎゅ、と膝を抱えて俯いた。

今回の任務は広大な砂漠に位置する古代ローマ遺跡の調査とイノセンスの回収だった。先に来ていたファインダーと街で合流して、コートの上から更に砂よけのマントを羽織り砂漠へと向かった。

砂漠の夜は怖い。幸いにもイノセントがあるとされている目的の遺跡は街からは行って帰ってこれない程の距離ではなかった。できる限り日中の内に帰ってこれるようにしよう、と説明を受けていたのに。

反応を示す左眼。次の瞬間、周辺の地面がゴボッ、と奇妙に盛り上がり無数の影が姿を表した。

『アクマッ…!』

灼熱の太陽が浮かぶ空に、冷たい銃口が怪しく光る。すかさずイノセンスを発動して地を蹴った。

幸いにも出現したアクマは全てレベル1。ラビとの応戦で、その殆どは難なく破壊することが出来た。

ただ、一体。
勝ち目がないと悟ったのか再び地中へ潜り込み逃げ延びようとするものがいた。

『深追いはするな!アレン…!!』

ラビの声が聞こえた。けれど僕の足は止まらなかった。アクマの進行方向を示すように盛り上がる地面と舞い上がる砂塵を追って走った。

結局、慣れない砂地に足を取られ思うように進めずアクマには逃げられてしまった。もう左眼も反応を示さない。
それでも諦めようとしない僕の肩をラビに掴まれてハッとした。

『アレン…落ち着くさ』

その時には既に遅かった。

唯一遺跡までの道を知っていたファインダーともはぐれ、食料も、乗ってきたラクダも何もなかった。


ただ果てない砂漠で二人きり。他には何もなかった。


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