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□学パロ[委員会] 神田ver.
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「テメエ…これで何回目だと思ってんだ……」
「えーと…八回目?」
「十回目だッ!!」
「す、すいません!」

冬の寒空の下、風紀委員委員長たる俺は朝の登校指導に当たっていた。主に遅刻者と服装の乱れが目立つ者が対象だ。そして目の前にいるコイツが、その中でも飛び抜けて遅刻魔なアレン・ウォーカー。通称モヤシ。

「とうとう今日で二桁だ。一年の段階でこの数字は極めて異例だぞ」

凄みを利かせて言うと叱られた子犬のようにしゅんと頭を下げてしまった。やめてくれ。そんな反応されたら許してしまいたくなるだろうが。

「…ゴホン、取りあえず、十回は指導対象だ。昼休みにでも生徒指導室にお呼びがかかるだろう。あとは担当のクロス先生に一任する。オレからは以上だ」

必要事項だけを告げて早々に踵を返す。同じく遅刻魔な馬鹿ウサギも今日はバスケの朝練があるとかで朝早くに登校しているから問題ないだろう。後はこの名簿を提出してオレもホームルームに戻るだけだ。

「ま、待ってください…!!それだけは…!」
「おわッ…!?」

突然背中にすがり付かれて思い切り仰け反る。眉間に皺を寄せて振り返ると今にも泣きそうなモヤシと目があった。

「どうしても迷ってしまうんです…!困った人がいたら見過ごせないし…それで……」

通学路でどうすれば迷えるのか些か疑問だが、その上目遣いは破壊力抜群だ。理性が…いや、風紀委員として全生徒を公平に見定めなくてはならないという良心がグラグラと揺れる。

「神田先輩…!クロス先生だけは…僕…ッ!」

悲痛そうな叫びが耳朶を打つ。いい声だ、喘がせたくなる…って違うだろ。もう遅刻はしないと繰り返すモヤシに深いため息をついてからゆっくりと向き直る。

「…分かった。今回は生徒指導には内密にしといてやる」

その言葉にぱっと目が輝く。

「…その代わり風紀委員で請け負うことにする。いいな?」
「はい!」

元気よく返事をして心底安心した表情を見せるモヤシ。風紀委員はあくまで取り締まるだけで処罰に関しては一切の権限を持っていない。ま、コイツはそんなこと知らねェんだろうけどな。名簿だって書き変えてしまえば分からない。オレが言わなければ、どちらも騙せると言うわけだ。

「放課後、視聴覚室で待ってる。絶対来いよ…?」

そう言って再び振り返ったオレの口元が怪しく吊り上がっていたことなど誰が知ろうか。


――放課後が楽しみだ。



fin. 20110109


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