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□学パロ[委員会] ラビver.
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「暇さー」
「暇ですねー」
暖かな日差しが降り注ぐ図書室。今時昼休みに本を借りに来るような殊勝な生徒もいなくてオレとアレン、受付で二人暇をもて余していた。
「図書当番なんていらないと思うんですけど…」
「でもいとかねーとパンダ先生に見つかったら大目玉さぁ」
「ですよねー」
どこか遠くで、騒がしい足音や女のコの笑い声が聞こえる。本が読みたきゃケイタイで読む時代さーなんて思いつつも、こうやってアレンと過ごす穏やかな一時はすげえ好きだったりして。例え四限にガチ寝していてもチャイムと共に飛び起きて、弁当片手にアレンの教室まで全速力で迎えに行くのが習慣になっていた。
お陰で『お前一年に彼女出来たんだってな』なんてにやけ面のクラスメイトにからかわれる始末さ。本当にそうなればどれだけ幸せなことか。けれど一つ、大きな問題が。
「…なあ、アレン」
「はい?」
「リナリーのこと…好きなんさ?」
「ぇえッ…!?」
ああ遂に聞いてしまった。でもってオレの恋さよならまた明日。耳まで顔を赤くして、どう考えてもこれは脈ありの反応さ。前々から仲いいなとは思ってたけれど…やはりというかなんというか。改めてそう初々しい反応をされると予想以上にショックが大きくて泣きそうオレ。
力なく前の机に倒れ込むとぽん、っと頭の上に手を乗せられた。
「いきなり何を言い出すんですか」
「だってアレン、よくリナリーと一緒にいるさ」
それは先輩が校長先生の妹さんで転校生の僕を色々と気にかけてくれるからですよ、と言って控えめに笑う。伝わるアレンの手の温かさに何とも言えないもどかしさを覚えた。
こんなに近いのに、遠くて遠くて、届かない。
「でも楽しそうだったさ」
「それなら、ラビ先輩と一緒にいる時だって楽しいですよ?」
何気ないその一言にぴくりと体が跳ねる。憧れてはいますけどリナリー先輩はそういう好きではないです、と聞いて飛び起きた。
「まじ?」
「はい」
「オレと一緒にいるの楽しいさ?」
「はい、ラビ先輩…?」
「オレも楽しいさアレン!」
静まり返った図書室に自分の声だけがやけに大きく響いた。アレンの肩をガッシリ掴んで満面の笑顔で言ってやった。
「ふっ…ほんとですか?嬉しいです」
きょとんとしていたアレンが表情を緩めて、やっぱりラビ先輩といると楽しいですとクスクスと笑い出した。その姿があまりにも可愛くて、思わずこのまま抱き締めてしまおうかと思った。自分の腕の中にすっぽりと収まってしまいそうな小さな体。きっと抱き心地もいいに決まってるさ。
「アレン…」
「…?ラビ先ぱ――」
キーンコーンカーンコーン
「「あ、」」
鳴り響くチャイムの音に我に帰った。危ない危ない、と慌てて手を離すと何故かアレンも慌ててる。
「どうしたんさ?」
「僕五限目調理実習でした!」
急いで調理室に行かないとジェリー先生に怒られるとうろたえるアレンに口元を緩めて、先に行っていいさーと笑ってやった。続きはまた今度。
「ぁ、」
「ん?」
ふと出口に向かおうとしたアレンが小さな声を上げて振り向いてくる。
「ラビ先輩!明日もまた、迎えに来てくださいね」
待ってますから、と微笑む天使に目眩がした。
ああもうこの子は――
「ったり前さ」
図書当番、万歳。
fin. 20110125
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