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□学パロ[部活] ラビver.
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熱気のこもった体育館。床とシューズが擦れる音。上がる歓声。

今日は他校との練習試合の日だった。
一階に集まって声援を送るのは試合に出ていないメンバーとその他大多数の女の子。

それもそのはず。

バスケ部と言えば校内で一二を争うほどの人気ぶりで、練習試合ともなれば黄色い声を上げる女生徒であふれ返る。
目当ては勿論、赤毛の彼。お調子者で底抜けて明るくて頼り甲斐のあるバスケ部キャプテン、ラビ。

「………」

僕はいちご牛乳片手に人も疎らな二階から観戦中。

ラビに、明日は試合があるから見に来てほしいと言われた。僕も、見に行きたいとは思っていた。

試合中のラビはそれはもうカッコいい。ラビの髪と同じ色をしたユニフォームもよく似合っているし、常にコート全体の動きを把握する鋭い瞳も、一声でチームの士気を上げる器量も、全てが眩しかった。

出来ることなら、間近で見ていたい。

(でも…)

僕とラビの関係はみんなには秘密。
恋人同士なんて、口が裂けても言えなかった。ただ仲のよい先輩と後輩。それが世間から見た僕らの関係。

本当は喉だって渇いてなかった。
ただ、なんとなく。手持ちぶさたで。
体育館に入る前に、すぐそこの自販機で買ってきたのだ。

そんな僕の気持ちも、ラビはちゃんと分かってくれている。
だから、人も疎らな二階の。ゴールのすぐ後ろの通路で見ててくれさ、と言って僕の頭をくしゃりと撫でてくれたのだ。
女の子に混じって観戦するのはさすがに勇気が足りなかったから、その気遣いが嬉しかった。

「んっ…!」

鳴り響く笛の音に危うくいちご牛乳が器官へと入りかける。軽くむせ込んですぐコートに視線を戻した。

(ラビ…?)

前に一度、試合中にラビが怪我を負ったことがあった。相手の選手と足がぶつかって、そのまま体育館の床に膝を強く打ち付けたのだ。
響く、鈍い音。擦れた皮膚は爛れていて、それを見たときは胸が潰れるかと思った。

幸い怪我は軽かった。ラビも心配すんなと笑った。
でも激しい試合を見ていると時折不安になって堪らない。

(怪我だけは…、しないで。ラビ……)

どうやら今回は敵チームのトラベリングに審判が笛を吹いただけのようで、ほっと胸を撫で下ろす。

試合も終盤。第4ピリオド。残り時間もあと僅か。
両チーム共に、63点。

ふと、ラビと目があった気がした。

『ここで、決めるさ』

そう言った気がした。ゆっくりと頷く。
信じてます。


試合開始の合図。

仲間の一人がすかさずラビにパスを回した。大きな手のひらがそれを受け止めて、瞬間、目付きが変わる。
低い姿勢のまま足腰を使って次々に敵を振り抜いてはゴールへと上り詰めていく。ボールはその手に吸い付くように。

「ラビ……!」

願うような気持ちでそう叫んだ。

地を蹴る足。しなるよう身体が伸びて手の内に収まっていたバスケットボールがゴールへと叩き込まれる。長い四肢を見事に生かしたダンクシュート。

訪れる、静寂。
次の瞬間どっと歓声が沸き上がった。

試合終了を告げるホイッスル。仲間が次々とラビの元に駆け寄って、笑顔が溢れた。

「やった…」

僕もつられて微笑む。


『アーレーン』

仲間に抱きつかれたままラビがそっと振り向いてきて、僕の名前を口ずさんだ。

「…?」


『バーン』


いたずらっぽい笑顔を浮かべて指で、撃ち抜く。

ゴールを?
きっと、違う。

その後ろにいる僕に向かって。

急に恥ずかしくなって思わず俯いてしまった。胸がきゅ、として苦しい。

(…ああ、)

これがラビのいう『ストライク!』ってやつなのかと変なとこに感心している自分に苦笑した。

そっと顔を上げると翡翠はまだこちらを見て笑っていて。

ラビは、最初から。
こうするつもりで。

ああ、もう。

(また恥ずかしくなってきたじゃないですかっ…)


二人きりになったら、まずはおめでとうと言って。
ラビはきっと疲れたさー!と抱き付いてくるだろうから。
しっかりとその身体を受け止めてあげよう。

「お疲れさまです、ラビ」


カッコよかったですよ。



fin. 20110525


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