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□Vestiges *
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※モブアレの描写があります。
初めてそれに気がついたのは、俺以外の誰かに微笑んだ瞬間だった。
ガヤガヤと、相変わらず騒がしい食堂に嫌気が指す。
ああ、また――。
気がつけば目で追っていた。人の輪の中心で聖人のような顔をして微笑むアイツ。
気がついた時は胸を貫かれるような思いだった。
丸みを帯びた小さな額が、輪郭を包むその柔らかな髪が、ふと微笑んだ表情が――何故だか『あの人』と重なって見えた。
綺麗事ばかり抜かしやがる嫌な奴だと、思っていたはずなのに。こんな思いを抱くなんて狂ってるとしか言いようがない。
記憶の中の笑顔を消すように、深く瞼を閉じた。
この喧騒ごと、どこか遠くの世界に置き去りにしたかった。