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□By Your Bicycle
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 相互リンク記念



「あっつぅ」

やけに形のはっきりした雲の浮かぶ青空を仰ぎながら,祐希は右手に持つバーのアイスを一口かじった。
口の中だけが冷たくなる。

「運転手さーん。風を感じたいんでもう少し早く漕いでもらえますかー?」
「ふざけんなよてめぇ」

ドスの利いた返事に「あらやだ怖い」と返す。

「大体,文句あんならてめぇが漕げばいいだろうが!」
「え?1人で帰っていいってこと?」
「これは俺の自転車だっつの!」
「じゃあ要が漕ぐしかないじゃん」
「……俺を乗せてくっつー選択肢はねぇのか」
「え?何で俺が要なんかを乗せて汗水垂らしてこの炎天下の中自転車を漕がなくちゃいけないわけ?」
「お前マジで置いてくぞ」

後ろからでも要がかなり苛ついているのが分かったので,祐希は黙ってアイスを頬張ることにした。
食べながら,目の前の首筋を凝視する。

(……細い。し,白い)

運動部に所属してない体は,華奢までとは言わずとも,決して逞しくはない。
うなじに流れる汗が光る。

(んー)

祐希は,吸い込まれるようにそこに顔を近づけて,


ぺろり,と舌を這わせた。


「――ッ!!?」

首筋に感じた奇妙な感覚に驚いて,要は急ブレーキをかけた。
何が起こったか分からないまま,ばっと後ろを振り返る。

「ゆ……き,てめっ,」

(耳まで真っ赤にしちゃってまぁ)

反応が面白すぎる。

「い,いま……っ,何して……!」
「舐めてみた」
「お,お前なぁ!」
「ごめんごめん。つい」
「ついじゃねぇ!!」

まさか美味しそうだったから,と言うわけにはいかないし,美味しかったと感想を言える状況でもない。

「いいか!?次変なことしたら問答無用で降りてもらうからな!!」
「はいはい」

首筋を押さえていた手を下ろして,要はまた自転車を漕ぎ出した。
本当は,「変なことって例えば何?」と尋ねてやりたかったが,この暑さの中,さっき以上に顔を火照らせるのも可哀想だからやめておこう。
俺って優しい,と1人頷く祐希。

「何にやにやしてんだよ」
「俺は笑わない主義だけど」
「顔に出てなくても,ぜってー心ん中で笑ってるだろ」
「俺のことなんか気にせず前見て安全運転してくださいな」


夏真っ盛りの青空の下。
2人を乗せた自転車は,生温い風を受けながら進んでいく。





*次はあとがきです



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