版権

□栗拾い編
2ページ/2ページ



というわけで,浅羽兄弟を含めたいつもの5人でとある山まで来た彼ら。

「やべー山だー!春ちゃん山だよ山!」
「そうですね,千鶴くん。紅葉がとっても綺麗ですねー」
「うん。よく燃えそうだ」
「何考えてんだ」
「駄目だよ祐希。焼き栗ははぜて危ないんだから」
「いやツッコむとこはそこじゃねぇ」

緩いやりとりもほどほどに,案内のおじいさんに大きな栗の木の側まで連れてこられた。
足元には沢山のイガが落ちている。

「結構落ちてるもんだね」

悠太がそう言うと,春も笑顔で頷いた。

「美味しい栗がいっぱい食べれますね」
「よかったじゃん,ちづ――」

「パンパカパーン!!」

祐希の台詞を遮って,橘千鶴は両手を広げた。
表情も煌々としている。
要は何だか嫌な予感がした。

「みんな聞いてくれーっ!」
「そんなでかい声で叫ばれたら山の向こう側にいても聞こえるわ」

もっともだと頷く悠太。

「今回の栗拾いについて提案がある!」

続ける。


「誰が一番多く拾えるか勝負しようぜ!」


「はぁ?」
「「乗った」」
「……なんで双子は即答なんだよ」
「ボクも参加します!」
「春ちゃんありがと大好きーっ」
そして春に抱きつく千鶴を睨む影が一つ。

「…………」
「どうした悠太。目つきが怖ぇぞ」
「別に」

そんな悠太に気付かず,千鶴は笑いながら尋ねる。

「要っちはどうするー?」
「俺はパス」
「なら勝者には要っちのキッスをプレゼントだー!」
「はぁッ!?」

千鶴はキョトンとした表情で要を見た。

「だって参加しないんでしょ?」
「だからってなんで俺がそんなことしなくちゃなんねーんだよ!」
「盛り上がるじゃんっ」
「むしろ盛り下がるわ!」
「そうかなー?春ちゃんはどう思う?」
「えぇっ!?ここでボクに振ります!?」
「だいたいそんなもんもらって嬉しい奴なんかいねぇだろ!」

(…………ここにいるけど)

「祐希。何か言った?」
「言ってません」
「右手上がってるよ」
「あら本当」

どうや無意識らしかった。

「分かった分かった,参加すりゃいいんだろ」

要がため息混じりにそう言うと,千鶴は「いえーいっ」とはしゃいだ声を上げた。

「そんじゃあレッツ栗拾いするぞ!ゆっきー!」
「いえっさー」
「ってなんで俺まで連行してんだ!おいコラ手ぇ離せ祐希!」
「きっこえっませーん」
「ふざけんな馬鹿野郎ッ!」

そして
残された悠太と春。

「……俺たちも適当に拾おうか」
「そうしましょう」


こうして,紆余曲折を経て,5人の栗拾いは始まった。



(lastup 12/26)


.
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ