捧げ物

□奏で愛
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 相互リンク記念



せんぱーい!と,背後から大きな(そして間の抜けた)声が聞こえた。

「……何?」

仕方なく振り向くと,苦笑いをした彼が走りながらやってくる。

「やだなー,そんな嬉しそうな顔しないでくださいよー」
「この顔のどこが嬉しそうなのよ」

楽器吹いてないで眼科行け。

「つまり今日も先輩は綺麗だっていうことです,はい」
「大真面目にそういう恥ずかしいことを言う男は嫌いよ」
「わーっ!!ごめんなさい冗談です!!」
「なるほど…,さっきの言葉はお世辞だったと。そういうことね」

横目で見ると,「揚げ足取らないでくださいよー」と情けなく眉を下げた。
相変わらず,へらへら笑う奴だ。

「で,何の用?」
「え?」

高校生にはそぐわない,きょとんとした顔。
まるで子供のよう。
きっと彼は知らないんだ。
我が校の吹奏楽部で,彼が一番顔がいいってことなんか。

「用ならもう済みましたよ?」

………………は?

「あなた,何しに私を呼んだの?」
「何しにって……」


先輩に,今日も綺麗ですねっていうためですけど。


なんて,何でもないようなことみたいに彼が言うから。

無性にムカついた。



「…………あ」

「あ?」



「アホなこと言う暇があるなら練習して来いこの愚か者ーっっ!!!」



「わわわっ!」

来た道を駆け足で戻っていく彼の背中を,思い切り睨みつけてやる。

「あぁ,……くそっ」

――ムカつく。

なんなの,あの馬鹿は。
呆れる……そんなくだらないことで私を呼び止めたなんて。

ホントムカつく。



――少しでも喜んでしまった自分が,一番ムカつく。



「怒った顔は可愛いですよーっ!」
「恥ずかしいことを大声で叫ぶな!!」





*次はあとがきです



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