章用 DRRR

□好き好きダーリン愛してる!
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学校は嫌いだ。教師なんかの言うこと聞いて、校則通りに並ばされて、いつまでも下らないし理解できないしたくない講義を聞かされて。正直こんなに滅んで欲しいものはない。まあ、良いところが1つもないという訳でもない。だって制服の女の子たちに会える。女子高生なんて町に出れば珍しくもない種族だけど、一緒に過ごして青春なんぞを体感できるのは学校だけだ。これに関しては機会をくれてありがとうと学校に感謝してもいい。あ、でも今の取り消し。俺やっぱり学校嫌いだわ。大本命に会えない。俺の大好きなあの人はこんなところにいない。あの人がいるのは遠い東京、池袋だ。
「京平に会ーいーたーいー」
抜けるような青空に向かって呟く現国の授業中。
なんで空はこんなに青いんだ、喧嘩売ってんのかこの野郎。返り討ちにしてやる。
別に空が俺の邪魔をしている訳でもなんでもないけれど、俺がこうして京平に会えずにイライラしてるのに能天気そうに晴れてるのが気に食わない。我ながら理不尽だ。理不尽でいいから学校滅べマジでもう。
京平に学校行ってないっつったらあの人いきなり「俺と会う時間減らしてもいいから学校行け」なんて言い出して。良いわけねーじゃんバカってキレかけたら頭押さえて「あー…ごめん、言い方間違えた。お前と会いたくねー訳じゃないんだ」とか謝るから何も言えなくなった。だって完璧じゃんあの人!俺なんかよりよっぽどモテそうじゃん!でもモテてる京平はなんか嫌だ、俺が嫌だ。
ちょっと考えがブレた。京平が言う「学校に行った方がいい理屈」は教師なんかメじゃないぐらい納得できたから俺は今こうして授業を受けている。こんなツマンねえハゲよりあの人が教えた方がいいんじゃないか。あの人は俺の彼氏であると同時に唯一の尊敬できる大人なんだ。
京平、どーしてるかなぁ…。
脳内呟きが女々しいぞ俺。
授業が退屈だからこんなにいろいろ考えるんだ。京平に会いたいのは事実だけど始終ベッタリしてる訳にはいかないじゃねえか、人間なんだから。
会ーいたいなぁ…。
学校行けって言われた以来しばらく会えていない恋人に思いを馳せ、鉛筆をくわえながら空を見た。こういう時に外が見えるのが窓側の席の利点だ。この席を引き当てた1ヶ月前の俺のくじ運に感謝。
窓から見える校門から1人の男子がコソコソ入ってくる。今頃登校とはどういう事だ。不届き者め、もう3時限目だぞ。かくいう俺だって2時限目にはここにいたんだ。すなわち1時限遅刻したけど。
あれ?
なんだか見覚えのあるワゴン車が校門に止まっていた。アニメ絵の扉。居心地悪そうに門にもたれかかったあの人は、あれ?
「俺帰る」
衝動的に体が浮いた。クラスメイト+教師の総勢43人の目がこっちな集まるけど気にしない。気にしてなんていられない!
「ちょっとダーリンがお迎えに来ちゃったんで」
おどけて言うとクラスに笑いの波が起こる。冗談だと思ってるだろお前ら。でもホントにいるんだぞ、強くて優しくて男前でかっこいい俺だけのダーリンが。どれぐらい素敵かって言うとまだ学校にいる俺を東京から迎えに来ちゃうくらい。
カバンを持って教室を走り出る。階段をいちいち踏まずに飛ぶ。3階分の距離がもどかしくて、ロケットみたいにあなたの元へ。
「京平ーっ!!」
こけそうな勢いで大きな体に飛び付く。
「千景!?」
「会いたかった!迎え来てくれたの!?」
「お前…っ、まだ授業中…」
「そんなん知るか!」
戸惑いながら優しく抱きしめてくれる京平。好き好きダーリン「愛してる!」
つい口に出ちまって、あ、と思った瞬間その唇は塞がれた。
ああもう、言葉で言ってくれよ。赤くなった顔も隠せず何も言えない。
ズルいだろこんなの。かっこよすぎるって、馬鹿。


「なあ千景、俺が来たからって学校飛び出すなよ」
「無理。会いたくて仕方なかったんだからしょうがないじゃん」
「お前なあ…」
「毎日京平が迎えに来てくれるんなら学校行くよ」
「流石に、それは無理だ」
「愛の力をもってしても無理?」
「…1週間に一度なら」




――――――
照れ屋なドタチンは渡草くんに車を借りたのです。

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