章用 DRRR

□恋する乙女の誘導尋問
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「黄身と白身、どっちが好き?」
至極真面目な顔で彼を見つめる彼女に、彼はぷっと吹き出しそうになった。
「いいねえ!波江は俺に黄身に言わせたいのかい?告白スレスレアウトだよそれは!」
「なんの話よ、それは。私は卵の好みを聞いただけよ」
いきなり笑い出す臨也に眉をひそめ波江は手にした卵をヒラヒラと振る。
「思い人の声唇で『君が好き』と言われることが乙女にとってどのくらいの価値があるのか。なるほど確かにそれは天にも昇る心持ちかもしれない。ね、波江?」
「だからなんで私に振るのよ」
一般人は理解しなくてもいい臨也の持論をいつも通りに聞き流していた波江は卵を割りかけてその手を止める。視線を台所から雇い主に移す。
「君が好き」
「…ッ!」
わかりにくくとも白い頬に赤みがさしたのを赤い瞳は見逃さなかった。
「照れた?鉄面皮が崩れてるよなみ…えうわっ!?」
にやけた顔面に張り付いた殻と卵白卵黄その他。波江が卵を投げつけたのだ。
「死ね!」
「ちょ…卵は酷いよ!?」
顔をドロドロにした臨也がたまらないとばかりに洗面所に駆け込む。
残された波江はキッチンで一人。
「…馬鹿」
彼女はまるで恋する乙女のように憎々しく呟いた。




――――――
勿論波江さんは「黄身が好き」が聞きたくて質問した訳です。

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